母体の栄養不良により生じる出生時低体重は、児が倹約型体質となりその児が成長後に富栄養環境に晒されると、体質と環境のミスマッチが生じ肥満やメタボリック症候群のみならず、耐糖能異常・高血圧・心疾患・精神疾患などの非感染性慢性疾患 (NCDs) 発症リスクが高まる事が知られている。( Developmental Origins of Disease and Health (DOHaD) 学説)近年、我々の食生活は欧米食化し高カロリー・高脂肪食が肥満を促す結果となっている。このような環境下、出生時すでにリスクを持つ低出生体重児のNCDs発症率は益々高くなる一方である。しかしながら、栄養不良による出生時低体重がなぜ高脂肪食負荷由来と同様の疾患発症リスクを負うのか、そのメカニズムについては明らかになっていない。 そこで、この体質と環境のミスマッチにより生じるNCDs発症リスク因子を同定する為、ラットモデルの低出生体重仔と標準出生体重仔に高脂肪食を負荷し代謝物の変化を解析した。その結果、母体カロリー制限の有無に関わらず高脂肪食負荷により有意に増加した代謝物5個、有意に低下した代謝物が8個観察された。この13の代謝物でPCA解析を行ったところ、母体カロリー制限有り低出生体重仔群は母体カロリー制限なしの標準出生体重仔群に比べ高脂肪食負荷群により近くなった。この事より低出生体重仔は生まれながらに高脂肪食を摂取しなくても、なんらかの高脂肪食負荷様の代謝物の変化が起こっていると推測された。さらに、13代謝物の中から変動が標準出生体重仔-高脂肪食負荷群と低出生体重仔-通常食群が同レベルであり、低出生体重仔-高脂肪食負荷群(インスリン抵抗性が生じている)で更に変動する6個の代謝物を見つけた。この6個の代謝物は、低出生体重仔において2型糖尿病に起因するリスク因子の候補となる。
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