研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、培養脂肪細胞を用いて脂肪細胞の分化を抑制する物質の探索を試みた。利用したのは3T3-F442A細胞(ECACC, European Collection of Authenticated Cell Culturesより購入)で、インスリン(10マイクロg/ml)による分化誘導と同時に各種化学物質を加え、分化・成熟の抑制効果(脂肪滴蓄積の抑制効果)を検証した。抑制効果が確認された物質に関しては、その機序を明らかにするため、ウエスタンブロット法による分析を行った。昨年度の結果より、脂肪滴の蓄積には一酸化窒素が関連する可能性が示されたため、一酸化窒素および活性酸素の存在下で生じるタンパク質のニトロ化に着目して分析を行った。薬剤を添加した細胞とコントロール細胞からタンパク質を回収し、抗6-ニトロトリプトファン抗体および抗3-ニトロチロシン抗体を用いてウエスタンブロット法を実施した。しかしながら、コントロールと比較してニトロ化の程度が有意に異なるタンパク質の同定には至らなかった。この原因として、所属機関の移動にともない、検出方法を変更したことが一因として考えられた。今後より高感度の検出法を用いて再度確認する予定である。現時点では、脂肪細胞の分化・成熟における一酸化窒素の役割は不明であるが、今後タンパク質のニトロ化以外の影響についても分析を行い、その機序の全容を解明したいと考えている。本研究によりこれまでに得られた知見は、今後さらなる増加が予想される2型糖尿病に対する予防薬・治療薬の開発に貢献できるものと考えている。
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