研究実績の概要 |
研究目的(概要)虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス術や、血液透析患者のアクセスサイトに対する必要性から、動脈圧に耐える再生血管が待ち望まれている。線維芽細胞をcell sourceとして作製した再生血管ではelastinやcollagen産生の不足から動脈瘤が形成されることが報告されており、分化誘導した平滑筋細胞を用いることの優位性が提唱されている。 我々は、平成30年度までの本研究において、細胞内Caイオン濃度の上昇、および細胞外Caイオン濃度の上昇がともに、マウス骨髄間葉系幹細胞に作用して骨髄脂肪化を促進する可能性を報告してきた。骨髄脂肪化は骨折や貧血の一因であり、治療標的として注目されている。今年度の研究では、高濃度の細胞外カルシウム([Ca2+]o)が特異的に骨髄脂肪化をもたらすメカニズムの同定を試みた。その結果、プロテインキナーゼC(PKC)を介したシグナル伝達経路が骨髄脂肪化に関与することを突きとめ、プロテインキナーゼC(PKC)の活性化薬であるホルボールエステルPMAがCaイオンの骨髄脂肪化促進作用を抑制することをマウスで報告した (Hashimoto R, Katoh Y et al. Journal of Physiological Sciences 69: 741-748, 2019)。さらに、グラム陰性菌の構成成分であるリポ多糖(LPS) が、JAK/STATシグナル伝達経路を活性化し、酸化LDLの取込みに必要なスカベンジャー受容体CD204およびCD36をマウス骨髄由来マクロファージの細胞膜上に増大させることによって、動脈硬化を増悪させることを報告した (Hashimoto R, Katoh Y et al. European Journal of Pharmacology 871:172940, 2020)。
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