研究課題/領域番号 |
16K01838
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
小田原 雅人 東京医科大学, 医学部, 教授 (00224254)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ファーマコゲノミクス / 2型糖尿病 / 残余リスク |
研究実績の概要 |
糖尿病治療薬の選択肢が広がってきているが治療薬への反応性には個人差があることが分かっている。糖尿病治療薬への反応性を、糖尿病治療薬の吸収・代謝に関わるとこれまで考えられている全ての遺伝子の遺伝子多型をスコア化して予測する方法を開発する。また、糖尿病治療の大きな課題として血糖コントロールや他の心血管疾患のリスク要因を改善してもなお心血管イベントリスクが高いという残余リスクを全ゲノム関連解析等で冠動脈疾患と関連が報告されている遺伝子多型がどの程度説明するか検討を行う。 本年度は、当院に通院する2型糖尿病患者について投薬内容・臨床情報を統合したデータベースを作成し、SU薬、メトフォルミン、DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬が開始された後6ヶ月間は投薬量の変更や他の追加薬剤などの変更がないなどの条件を満たす患者を抽出した。糖尿病治療薬の吸収・代謝に関わるとこれまで考えられている遺伝子の多型をタイピングするために必要なPCR用のプローブを作成した。また、2型糖尿病患者の臨床情報データベースから、心血管イベントを起こした2型糖尿病患者を心血管疾患合併群、起こしていないものを対照群として抽出した。これまでの全ゲノム関連解析で心血管疾患と全ゲノムレベルで有意に関連し、従来の心血管リスク因子とは関連しない残余リスク候補遺伝子内の遺伝子多型について対象者の遺伝子型をタイピングするためのタイピングで必要なリアルタイムPCRに使用するプローブを設計した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床データベースから抽出した対象者から本研究への参加同意を得るための説明に予想以上に時間と労力を割く必要があり、DNA抽出が遅れたため、DNA抽出関連の消耗品にかかると想定した費用の一部は次年度に持ち越しとなった。次年度は同意説明のための人員を確保し対象者から本研究への参加同意を速やかに取っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 治療薬反応性を予測する複合遺伝子多型リスクスコア構築と有用性:臨床データベースから抽出した対象者についてタイピングした遺伝子多型から構成されるリスクスコアを既報の方法に準拠して計算する。治療開始時と開始6ヶ月の時点とのHbA1cの差、期間中の最低HbA1c, HbA1c7%未満を一度でも達成したかどうかをアウトカムとして、年齢、性別、BMI(body mass index)、開始時HbA1c、eGFR(腎機能)を共変量とする共分散分析によってリスクスコアとの関連解析を行う。寄与率の高い遺伝子多型と年齢・性別・BMIなど遺伝子多型以外の臨床指標を含めたリスクスコアを再度設定してROC(Receiver operating characteristic)を描出することによって反応性を感度・特異度よく検出するリスクスコアのカットオフ値を見出す。ROC曲線下面積によってリスクスコアの有用性を明らかにする。 (2) 心血管イベントを予測する複合遺伝子多型リスクスコア構築と有用性:30年度までに対象者の遺伝子型をタイピングし、(1)と同様の方法によって複合遺伝子多型リスクスコアを個々人について算出し、リスクスコアについて心血管疾患合併との関連を年齢・性別・BMI・糖尿病罹病期間・従来の心血管リスク因子で調整して関連解析を行う。寄与率の高い遺伝子多型と、29年度中に心血管疾患との因果関係を明らかにした血管機能・酸化ストレスマーカー、従来の心血管リスク因子、を合わせた複合リスクスコアを構築し、ROCによってカットオフ値を設定するとともに、ROC曲線下面積によって本リスク予測法の有用性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床データベースから抽出した対象者から本研究への参加同意を得るための説明に予想以上に時間と労力を割く必要があり、DNA抽出が遅れたため、DNA抽出関連の消耗品にかかると想定した費用の一部は次年度に持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
同意説明のための人員を確保し対象者から本研究への参加同意を速やかに取っていくとともにDNA抽出を効率化する。
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