研究実績の概要 |
水素分子は優れた抗酸化作用を持つだけでなく、抗炎症作用、抗アレルギー作用、細胞死抑制作用、エネルギー代謝促進作用などの多彩な効果を有している。我々は水素分子が生体内において、細胞膜のフリーラジカル連鎖反応に介入し、脂質メディエイターとなる過酸化リン脂質生成を変化させることで炎症に関わる遺伝子の発現を制御することを明らかにした。本研究では炎症、アレルギー、細胞死に関わる免疫細胞に焦点をあて、免疫細胞の酸化還元状態をリアルタイムで測定できる実験系の開発を試みた。我々が開発した酸化還元モニタリングマウスであるroGFPマウスの免疫組織でのroGFPタンパク質の発現を調べた。ミトコンドリアでroGFPを発現するMROマウスと、細胞質でroGFPを発現するCROマウスのどちらの免疫系組織においても405nm,480nmの励起波長でのroGFPたんぱく質の発現が確認された。さらにroGFPマウスの脾臓から免疫細胞を単離し、フローサイトメーターで解析を行った。各種免疫細胞でのroGFPたんぱく質の発現が確認された。さらに還元剤であるDTT、酸化剤である過酸化水素で処理した免疫細胞は、処理前に比べて405nmと480nmの蛍光比率が変化し、酸化還元状態の測定が可能なことが分かった。今後はroGFPマウスの免疫細胞を用いて、炎症、アレルギー、細胞死を誘導し、水素分子を処理してex vivoでの水素分子の免疫細胞への影響を調べる。
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