研究課題/領域番号 |
16K01841
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
日浦 幹夫 法政大学, スポーツ健康学部, 教授 (10327918)
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研究分担者 |
成相 直 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (00228090)
石井 賢二 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (10231135)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 陽電子放射断層撮影 / 脳血流量 / 脳血流自動調節能 / 運動負荷 / 神経画像 |
研究実績の概要 |
平成29年度の主な研究計画は、1)運動負荷PET計測結果のとりまとめ、2)運動負荷前後における神経代謝カップリングの探索を目的とした、PETで計測した前頭葉皮質の局所脳血流量(regional cerebral blood flow; rCBF)と近赤外線スペクトロスコピー法(Near Infrared Spectroscopy; NIRS)で計測した酸素代謝変化量、酸化型および還元型ヘモグロビンの濃度変化(ΔO2Hb、ΔHHb)の比較検討、3)これまでに得られたデータに基づく成果報告であった。 1)平成28年度以降に東京都健康長寿医療センターで実施したPET計測データを解析した。健常若年男性13名の検査結果に加え、脳血管障害の既往があり運動習慣を継続している男性5名の検査結果について検討した。 2)法政大学において6名の若年男性を対象とし、運動負荷前後における前頭葉皮質のrCBFとΔO2Hb、ΔHHbを比較した。運動負荷前後のプロトコルはPET検査と同等の内容で実施し、仰臥位自転車エルゴメーターを用いたサイクリング運動を行い、運動中および前後で心拍数、血圧、ΔO2Hb、ΔHHbなどのモニタリングを実施した。有害事象はなく計画通りにデータ収集を行った。今回計測した6名に加え、これまでに計測を実施した他の6名の計12名のNIRS計測のデータと平成28年度に実施したPET計測のデータを活用してrCBFとΔO2Hb、ΔHHbを比較した。 3)これまでに得られたデータを活用し、American College of Sports Medicine、などの海外の学会にて発表した。特にNIRSとPET検査のデータの比較は、運動負荷中の神経代謝カップリングについて探索的に検討する本研究課題の副次的テーマであり、ISOTT2017にて発表した。また、論文作成、総評執筆に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は参加ボランティアの応募が少なく、PET検査が十分に行えなかった。PET計測は東京都健康長寿医療センターにて実施可能な日時に制約があり、参加者の予定と研究実施の日程の都合を合わせることが困難な場合があった。その結果、予定していた検査数を若干下回った。平成30年度にPET検査を追加し、必要なデータを補足する予定である。神経代謝カップリングを探索する目的でrCBFとΔO2Hb、ΔHHbのデータを比較検討を予定していたが、PETとNIRSの2つの検査の双方が実施可能な同一被験者を募集することができず、十分なデータが得られていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は運動負荷後の血圧変化(運動後低血圧)の差異を検討する目的で、参加者募集を継続してPET計測前の運動負荷テストの機会を増やしていく。運動負荷テストの結果、運動後低血圧の生じ方のパターンが異なる2群が認められれば、この2群について最終的に10名程度ずつをPET計測に割り当てる予定である。 平成29年度に発表した学会での議論の中で、運動中の脳循環と関連する生理学的指標として心拍出量の提示が必要であることを指摘された。したがって、平成30年度は1)こまで得られた動脈圧波形データを解析する、2)新たな被験者に対して心拍出量が推定可能な検査機器を用いて運動負荷テストを実施する、等の補足的な実験を追加する予定である。 神経代謝カップリングを探索する目的で探索的に実施したrCBFとΔO2Hb、ΔHHbのデータを比較検討した結果を国際学会にて発表した際に以下の事項を指摘された。今回活用したNIRSの検査機器(Spectratech, OEG-16, Yokohama, Japan)では、運動負荷中の頭蓋外の血流変化が脳実質の酸素代謝に影響を除外することができないため、前頭葉皮質の酸素代謝を実質的には観察できていない。したがって、今後は頭蓋内のみを抽出可能なNIRS検査機器の利用を検討する。神経代謝カップリングの探索は、本研究課題の副次的テーマではあるが、PET計測を用いたrCBFデータを活用可能であり今後の発展が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度はPET検査を実施する機会が減ったため、検査ボランティアに支払う謝金の額が当初の予想を下回ったことが理由の一つである。また、動脈圧波形から心拍出量を推定するシステムが当初の計画より高額であったため、この導入については他の資金を用いる予定に変更した。当該次年度使用額は検査ボランティアの謝金、成果報告のための学会出張、論文作成などに必要となる見込みである。
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