研究課題
2018年度は血圧および心拍出量を計測する機器として新たに非侵襲的心拍出量計(ClearSight System, Edwards Lifesciences, UK)を青森大学脳と健康科学研究センターに導入した。これにより運動負荷中のPET検査による脳血流量と併せて循環指標をリアルタイムにモニタリングすることが可能となり、本研究課題を遂行する上で貴重な観察項目が補強された。2018年度の主な研究計画は1)運動負荷時中の非侵襲的心拍出量計測をPET計測中に実施するための予備実験、2)PETで計測した前頭葉皮質の局所脳血流量(regional cerebral blood flow; rCBF)と近赤外線スペクトロスコピー法(Near Infrared Spectroscopy; NIRS)で計測した酸素代謝変化量の比較検討、3)得られたデータに基づく成果報告である。1)青森大学において若年男性4名を対象とし、運動負荷中にClearSight Systemを用いて非侵襲的心拍出量計測を実施した。2)NIRSの機器として、組織酸素飽和度の絶対値が計測可能なtNIRS-1(浜松ホトニクス社)を活用し本研究課題で得られる脳血流量(絶対値)を参照することで、将来的にい酸素消費量計測を検討した。3)これまでに得られたデータを活用して検討事項を国際学会(Neuroscience 2018、演題名;”Redistribution of cerebral blood flow evoked by aerobic exercise is attributable to neuro-vascular coupling and cerebral autoregulation: A study using PET”)にて発表した。また、この他の国内学会での演題発表および論文作成に取り組んだ。
4: 遅れている
2018年度は研究代表者が青森大学へ移籍となり、研究備品の調達と研究参加ボランティア(被験者を含む)の募集など、研究環境の整備・再構築に時間を要した。非侵襲的心拍出量計や間接熱量計の納品および設置が当初の予定より大幅に遅れ、自転車エルゴメーター(エルゴセレクト200、インターリハ社)、仰臥位自転車エルゴメーター(Angioergo, Lode社)との同期計測の準備を含め、2018年10月以降に実際の計測が可能となる状況であった。この結果、2018年度は運動負荷中の非侵襲的心拍出量計の活用を目的とした予備実験のみ実施したが、京都健康長寿医療センターでのPET計測が未実施となった。一方、計測システムの導入が遅れた間に2018年6月にはtNIRS-1を試用する機会を設けて実際のデータ測定を実施し、運動負荷時の脳血流と酸素代謝のカップリングを検証する研究計画について検討した。このデータを活用して脳循環サマーキャンプ2018において発表したが(演題名:有酸素運動負荷時のPET計測による局所脳血流量とNIRS計測指標の差異の検討)、2018年度はPET計測が実施できなかったため、実質的な検討を次年度に延期する結果となった。
これまでの成果発表を通じて運動に伴うの脳循環の変化の機序を解明するためには心拍出量を併せて提示が必要であることを指摘されたため、今後は新たな被験者に対して心拍出量が計測可能な検査機器ClearSight Systemを用いて運動負荷テストを実施する予定である。2018年度に実施した予備実験の結果を踏まえ、2019年度も継続して安静時及び運動負荷中の心拍出量の計測を実施する。今後は運動負荷テストの結果、運動後低血圧や心拍出量変化パターンに応じて新たに15名程度を対象としたPET計測を計画しデータ解析を行う。これまでの研究成果を踏まえて次年度以降に新たに追加する検討事案として、運動負荷中の脳血流と酸素代謝のカップリングを探索する目的で、tNIRS-1(浜松ホトニクス社)を活用して運動負荷中の組織酸素飽和度の絶対値を計測する計画を立案中である。これによって、PET計測での脳血流値を参照すれば酸素消費量の定量値を求めることが可能となる。今後はPET計測中にリアルタイムにNIRS計測を実施することを目的とし、PET計測機器での予備実験行った後に、被検者を対象とした運動負荷計測の実施を計画している。このような手法によってPET計測を活用した運動負荷中の脳循環調節機構を解明するための稀少なデータが得られることが予想される。
研究代表者が青森大学へ移籍となり研究環境の整備が当初の予定より大幅に遅れ、実際の研究実施が2018年10月以となった。この結果、2018年度は健常被験者を対象とした予備実験のみ実施するにとどまり、東京都健康長寿医療センターでのPET計測が未実施となったことが理由である。次年度は新規に導入した非侵襲的心拍出量計ほか計測機器およびPET計測に必要な消耗費、検査ボランティアの謝金、成果報告のための学会出張、論文作成などに必要となる見込みである。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Adv Exp Med Biol. 2018 Aug 30;1072:269-274.
巻: 1072 ページ: 269-274
10.1007/978-3-319-91287-5_43.