研究課題/領域番号 |
16K01844
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
福尾 惠介 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (40156758)
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研究分担者 |
安田 修 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (00372615)
横路 三有紀 武庫川女子大学, 生活環境学部, 助教 (80757188)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / Apoptogenic protein 1 / 脂肪肝 / 耐糖能異常 / 熱産生能 |
研究実績の概要 |
初年度の検討より、Apop-1は加齢に伴う腎機能低下に関与する可能性が示唆された。そこで、前年度から老化の原因となる慢性炎症を惹起させることを目的としてWT及びApop-1KOマウスに対する高脂肪食負荷実験を行い、本年度はその解析を進めた。 高脂肪食負荷後24週目の腎機能にWTとApop-1KOの違いは認められなかった。しかし、体重や除脂肪率(CT値)、体脂肪率(CT値)、食餌摂取量は普通食群、高脂肪食群ともにWTとApop-KOの違いはなかったが、肝臓脂肪量(CT値)及び肝臓重量は普通食群、高脂肪食群ともにWTと比較してApop-KOで有意に低値であった。肝細胞傷害の指標である血中ALT値はWTにおいて、高脂肪食負荷による有意な上昇を示したが、Apop-KOでは高脂肪食負荷による上昇は認められなかった。さらに、肝組織のオイルレッドO染色の結果、WTは高脂肪食負荷による脂肪蓄積量の有意な増加や大滴性の脂肪滴形成を認めたが、Apop-KOは高脂肪食負荷による脂肪蓄積は有意に抑制されていた。肝臓におけるミトコンドリア呼吸鎖活性測定の結果、Apop-KOはWTに比し、各群でCOX活性の低値が見られたが、ATP量は普通食群には違いが見られず、高脂肪食群では低値傾向となった。肝組織中遺伝子発現解析より、エネルギー代謝の制御因子であるPGC1α発現量が、高脂肪食群においてWTに比しApop-KOで有意に低値を示した。 IPGTT、ITTの結果、高脂肪食群のApop-KOはWTと比較してインスリン抵抗性は同程度であったが、インスリン分泌低下による耐糖能異常が見られた。直腸温を測定した結果、Apop-KOは普通食群ではWTとの違いは見られなかったが、高脂肪食群でWTに比し熱産生能の低下が認められた。 以上より、Apop-1は高脂肪食負荷による肝臓への脂肪蓄積に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Apop-1KOマウスへ高脂肪食負荷することにより、期待した腎機能への影響は認められなかったが、WTマウスに比べ肝臓の脂肪化が抑制されることが認められた。さらに、Apop-1KOは耐糖能異常、熱産生能の低下が生じることも確認された。 脂肪肝や糖尿病は食の欧米化や運動不足など生活習慣に起因する生活習慣病の一つであり、どちらの病態も発がんリスクを上昇させることが知られている。Apopがこれらの病態を解明することは新たな治療戦略の創出につながることが期待される。したがって、新しい可能性が見いだされたため、おおむね順調に進展していると考える。 しかしながら、腎機能とApopの関連については別の実験モデルで検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪肝とApopの関連を明確にするため、肝臓の遺伝子発現及びたんぱく質発現解析を進める。また、Apop欠損によってCOX活性が低下する機序を明らかにするため、siRNAを用いた培養細胞実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度には細胞実験を行う予定としていたため使用金額を多く配分していたが、肝臓に着目して動物実験の解析を進めたため、培養細胞を用いた実験まで進まなかった。繰り越し分は、次年度行う細胞実験の消耗品に使用する予定である。
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