研究課題/領域番号 |
16K01847
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
御船 弘治 久留米大学, 医学部, 准教授 (70174117)
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研究分担者 |
満園 良一 久留米大学, 人間健康学部, 教授 (20200058)
田尻 祐司 久留米大学, 医学部, 教授 (80469361)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 概日リズム / ニューロメジンU / 自発運動 / ニューロメジンU欠損マウス / 時限制限給餌 / 探索行動 |
研究実績の概要 |
本研究は概日リズムリセット機構において自発運動を制御するメカニズムの一つとして、摂食促進ホルモン・グレリンと摂食抑制ホルモン・ニューロメジンU(NMU)の役割を明らかにすることを目的とし、平成29年度は「概日リズムリセット時の自発運動量制御におけるニューロメジンUの役割」について野生型(WT)及びニューロメジンU欠損(NMU KO)マウスを用い、以下の研究を実施した。 ①NMUKOマウスのグレリン日内リズム:WT及びNMUKOマウス共に、7、19時において血中グレリン濃度が上昇し、13、25時において低下する日内リズムが認められ差はなかった。 ②NMUKOマウスの概日リズムリセット機構:1)自由摂餌時の一日・摂餌量は、NMUKOマウスにおいて明期および暗期摂餌量共に、WTマウスに比べ有意に増加しており、NMUKOマウスの摂餌量増加に伴う食行動異常が認められた。2)明暗サイクル(明期:7~19時)下にて、制限給餌時刻を5~7時, 19~21時/日に設定した場合、両マウス共に制限給餌時刻に同調した自発運動が認められ、暗期開始(19時)とともに運動量が増加し、午前0時頃まで持続した。制限給餌時刻19~21時における自発運動量は両者に差はなかったが、制限給餌時刻5~7時の運動量は、NMUKOマウスではWTマウスに比べ有意に減少していた。また、暗期終了(午前7時)前の制限給餌開始(午前5時)前の午前3~5時におけるNMUKOマウス自発活動量は、WTマウスに比べ有意に減少しており、NMUKOマウスでは探索行動が低下していることが明らかとなった。 以上の結果より、明期から暗期開始時刻における概日リズムリセット機構にニューロメジンU欠損により生じる変調は来たしていないが、暗期終了前の自発運動量や探索行動がNMUKOマウスでは減少していたことから、予知行動へのニューロメジンUの関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度予定していた野生型(WT)マウスおよびニューロメジンU欠損(NMUKO)マウスを用いた「概日リズムリセット時の自発運動量制御におけるニューロメジンUの役割」については、①NMUKOマウスのグレリン日内リズム、②制限給餌時間による自発運動・自発活動などの変化について動物実験を実施し、概日リズムリセット機構におけるニューロメジンUの役割が明らかとなった。 さらに、前年度実施出来なかったマウス摂餌行動・呼吸代謝解析システムによるグレリン欠損(GKO)マウスにおける摂餌量、摂餌行動量、エネルギー代謝(呼吸商など)の測定・解析や、iPRECIOマイクロ・インフュージョンポンプを用いたGKOマウスへのグレリン受容体agonistの投与実験も今年度に実施し、成果を得ることができ、おおむね当初の研究計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究結果より、明期から暗期開始時刻における概日リズムのリセット機構にニューロメジンUの欠損により生じる変調は来たしていないが、暗期終了前の自発運動量や探索行動がNMUKOマウスでは減少していたことから、予知行動へのニューロメジンUの関与が示唆された。一方、iPRECIOマイクロ・インフュージョンポンプを用いたNMUKOマウスへのNMU agonist投与実験は、期待できる成果が得られなかったので、当初の研究計画を変更し、現在その推進方策を検討中である。 以上の研究成果を踏まえ、今後は、概日リズムリセット機構には摂餌行動、明暗の光刺激、グレリンなど以外の摂食抑制因子(ニューロメジンU)や時計遺伝子制御因子(ニューロメジンS)も研究視野に入れた概日リズムリセット機構の解析を進めて行く予定である。また、グレリン欠損(GKO)・ニューロメジンU欠損マウス(GKO/NMUKO・ダブルKOマウス)を作成し、本マウスを用い、概日リズムリセット時の自発運動制御機構における中枢および末梢体内時計の役割を明らかにしていく予定である。
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