研究課題
本研究では、ヒト肝組織試料を用いて、非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: 以下NASH)について、mRNAとマイクロRNA(以下miRNA)の発現プロファイルの統合的な解析を行い、NASHを構成する各病態を解明することを目的としている。また同一症例で血中のmiRNAプロファイルと比較できる場合は、NASHの各病態の非侵襲的な診断の可能性を探る。我々は医学的理由から減量手術(bariatric surgery)を受ける日本人高度肥満患者104名を対象に、事前に同意を得た上で、術中に肝生検を行い、得られた肝組織試料について、マイクロアレイによるmRNAとmiRNAの発現解析を行った。この集団ではNASHが高頻度であることを事前に確認しており、NASHに矛盾しない症例は、疑い例も含めて89名であった。平成28年度は、Agilent社SurePrint G3 Human GEマイクロアレイを用いたmRNAの網羅的な解析の結果、NASH特異的、あるいはステージ特異的に変化する遺伝子を合計500以上得た。またunsupervised clustering解析により、同調して発現の変動するさまざまな機能的な遺伝子クラスター(炎症、脂質代謝、細胞増殖、線維化など)を得ることができ、NASHの「multiple parallel hits hypothesis」を支持すると考えられた。現在、Agilent社SurePrint G3 Human miRNAマイクロアレイ(8x 60K)によるmiRNAの網羅的な発現データについて、mRNAとの対応を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
試料の解析は順調に進行している。
今後は、in silicoの配列予測、in vitroの検証実験とあわせて、miRNAの標的mRNA候補を同定し、NASHの各病態レベルで重要な分子を抽出する。同一症例での肝組織と血中miRNAとの関連を検証して、どの病態・分子が血中に反映されるのかを検討する。
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Carcinogenesis
巻: 38 ページ: 261-270
10.1093/carcin/bgx005