研究課題/領域番号 |
16K01851
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
森 秀一 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30508677)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 加齢・老化 / バイオマーカー / 神経筋シナプス |
研究実績の概要 |
サルコペニア (加齢に伴う筋萎縮と筋力の低下) を迅速に診断して適切な治療を早期に開始するためには、筋萎縮の状況を正確にモニタリングできる血中バイオマーカーを所定の臨床診療に取り入れることである。申請者は、筋萎縮のprimary eventである神経筋シナプス (運動神経と骨格筋のつなぎ目) の変化を反映する分子が早期に筋萎縮を検出できるバイオマーカーになり得ると考え、神経筋シナプスの構造維持に必須の分子であるMuSK (muscle-specific kinase) に着目した。本研究では、筋萎縮とMuSKの関係を明らかにすることで、MuSKがサルコペニアのバイオマーカーとして有用であることを示し、臨床現場への応用に繋げることを目的とする。 平成28年度は筋萎縮の動物モデルを作成し、MuSKの血中濃度と病態の関係を検討した。マウス坐骨神経の切除モデルでは、筋量の低下が生じる前に血中MuSK濃度が上昇することが明らかとなった。また、坐骨神経を挫滅して一過的な除神経の後に筋の再神経支配を誘導すると、筋量の回復に先行して血中MuSK濃度が低下することが明らかとなった。これらの結果は、血中MuSK濃度が筋量ではなく筋の神経支配状況を反映して変化していることを示しており、筋萎縮のリスクを迅速に診断可能にする特徴であると考えられた。加えて、ギプス固定による筋萎縮においても血中MuSK濃度が上昇することが示され、神経原性の筋萎縮だけでなく、筋原性の筋萎縮にもバイオマーカーとしての有用性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物モデルの有用性が確認されたことから、これらの成果を学会や論文で発表する見通しが立っているため、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
自然発症性の筋萎縮モデル動物 (ALS) も用いて、血中MuSK濃度と病態の関係を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度内に使用すべき民間からの助成金が残っており、それらを優先して使用したことから剰余分が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究では比較的高額な試薬または消耗品をコンスタントに使用しており、また多数の実験動物を必要とするため、それらの購入や維持費用に回していく予定である。
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