昨年度代謝測定用ケージにてマウス飼育し、代謝ケージ内の酸素及び二酸化炭素を測定し、代謝エネルギーを算出することにより食事誘発性熱産生量を解析する系を構築した。様々な系統のマウスについて解析系の検証を重ねた結果、数値が活動量の大小に左右される可能性が示唆されたので、今年度は、活動量の大きいマウス系統、小さいマウス系統、それぞれに適した測定系を構築した。この系を用いて解析した結果、既報通り食事誘発性熱産生量は食事により摂取したエネルギーの10%程度であったものの、栄養素毎のDITはこれまでの報告と異なることを明らかにした。食事誘発性熱産生には褐色脂肪組織におけるミトコンドリア機能、特にミトコンドリア脱共役タンパク質UCP1の関与が必須であり、UCP1発現は転写制御因子PPARαによって制御されている。そこで、PPARαノックアウトマウスを用いて食事誘発性熱産生量を測定した。その結果、炭水化物及びたん白質による食事誘発性熱産生量は野生型マウスと変わらないことが明らかになった。PPARαノックアウトマウスのミトコンドリア活性の指標として脱共役タンパク質UCP1活性について測定を行ったが、野生型とほぼ同程度の活性を示した。さらに、PPARαノックアウトマウスの脱共役タンパク質UCP1タンパク質量をウェスタンブロットにより解析した結果、野生型マウスと同程度であった。
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