運動による各組織への機械的な刺激は固体の恒常性維持に貢献することは広く認知されつつある。このことは、細胞に対するストレッチ実験においても確認されている。しかし、個体レベルにおける他動的メカニカルストレスの効果は、どの程度の刺激が身体や各組織に反映されているか、不明なことが多い。本研究では、マウスを用いて他動的メカニカルストレスは神経支配下にない筋組織においてもその筋萎縮抑制効果がどの程度ありえるのか、また、効果的なメカニカルストレスはどのようなものなのかその詳細解析を行うものであった。 他動的メカニカルストレスは神経支配の有無にかかわらず効果があることが確認されたが、萎縮した筋の回復は、どのような形で不動化したかによって大きく異なる。例えば、足首の関節固定において背屈位と底屈位では萎縮の程度と回復経過に差違があることは古くより知られている。今回の研究においても同様のことが確認された。さらに、背屈位固定では筋萎縮はあるところで止まり、固定化解除によってさらなる萎縮が進むことが確認された。この現象は神経支配の有無に依存せず確認され、また、神経支配が残された状態では、固定化したままでの筋萎縮からの回復が確認された。この結果は、骨格筋の動・不動では説明ができず、線維芽細胞の関与が示唆された。背屈固定では筋組織内のコラーゲンの沈着が進んでおり、それに比して単核細胞の増加が確認されたが、その数は1割程度であった。 そこで、各処置した腓腹筋より線維芽細胞を採取し、免疫染色等により分析したところ、活性化した線維芽細胞の数に大きな差違があることが分かった。このことより、他動的メカニカルストレスの効果は筋組織内への線維芽細胞への刺激となっており、刺激を受けた線維芽細胞が骨格筋のメンテナンスを行っていると結論した。
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