研究課題/領域番号 |
16K01858
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
野口 康彦 茨城大学, 人文学部, 教授 (30434541)
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研究分担者 |
青木 聡 大正大学, 心理社会学部, 教授 (40327987)
小田切 紀子 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (10316672)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 離婚 / 子ども / 養育費 / 面会交流 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者がこれまで行ってきた、親の離婚を経験した子どもの精神発達に関する研究を踏まえ、面会交流のあり方と養育費の授受が子どもの発達に及ぼす影響を解明し、離婚後の子どもの利益の実現に向けた問題提起を行うものである。 平成28年度の主な研究実績として、学術論文である「離婚後の子どもの貧困防止のための養育支援の必要性―臨床心理学と法学による協働的視点から-」の発表がある。民法を専門とする法学者との共同執筆により、子どもの権利としての養育費の授受に関して、分析と考察を行った。民法877条1項より、親子間には扶養の権利義務が発生するが、現実に未成年者が別居している親に対して扶養を請求するのはその能力や知識の面からも難しい。そのため、多くの場合には同居している親から別居している親に対して扶養を請求することになる。だが、離婚後の親同士の葛藤が高かったりする場合は、養育費の授受が親同士の取引の材料に使われたりするなど、親の側の事情や意思に左右されやすい。また、養育費の未払いや不払いに罰則規定がないと、別居親あるいは非監護親の(多くの場合は父親)の養育責任は放置されたままとなる。このように、子どもの貧困化とも関連の深い養育費の未払いあるいは不払いの現状には、司法や行政の介入しない離婚制度の歪みがある点が明らかになった。 また、2016年10月16日に、科研費による広報活動と調査協力者を募集する目的から、「ひとり親・再婚家庭における子どもの発達と養育支援」をテーマとするシンポジウムを行った。シンポジウムを通して、面会交流や養育費の授受は親の都合によって決められるのではなく、あくまでも「子どもの権利」なのであり、それが守られる養育の仕組みと法律が必要であることがあらためて確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学術論文として、次の3編が大学の紀要と学会誌に掲載された。 ①野口康彦・高橋大輔(2017)離婚後の子どもの貧困防止のための養育支援の必要性―臨床心理学と法学による協働的視点から-.茨城大学人文学部紀要人文コミュニケーション学科論集,22, ②野口康彦・青木聡・小田切紀子(2016)離婚後の親子関係及び面会交流が子どもの適応に及ぼす影響.家族療法研究,33(3),331-337.(査読あり) ③野口康彦・青木聡(2016)ノルウェーの離婚制度.家族療法研究,33(2), 216-224. なお、②と③は前回科研費である「基盤研究(C) 離婚後の面会交流のあり方と子どもの心理的健康に関する質問紙とPAC分析による研究(課題番号;25350921)」によるものである。また、2016年10月16日に「ひとり親・再婚家庭における子どもの発達と養育支援」というテーマでシンポジウムを開催した。シンポジストは分担研究者の青木聡(大正大学)と小田切紀子(東京国際大学)に加えて、瀧川善和氏(水戸家庭裁判所主任家裁調査官)の4人であった。参加者は約40名程度であったが、一般市民の他にも、臨床心理士や離婚後の家庭や子どもにかかわる支援者が集まった。
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今後の研究の推進方策 |
面会交流の有無や方法、そして養育費の授受とその内容について検証するためえの質問紙調査を行う予定である。質問紙は、研究分担者の青木聡大正大学教授と相談のうえ、関東圏を中心とした複数の大学生に配布する。その一方で、親の離婚を経験した高校生あるいは大学に進学しなかった青年には、50名を目標として質問紙を配布したい。すでに調査協力の了解を得ている当事者グループ「日本離婚の子ども協会」に依頼するが、回答数が少ない場合は、インターネット上の親の離婚のサイト等にて募集する。調査結果の分析は平成30年3月までには終了させる。また、質問紙調査の回答者のうち、インタビュー調査に同意してくれた人と質問紙調査とは別に募った人を対象とした、1時間から1時間半程度の半構造化面接を行う。非監護親との面会交流の方法や養育費の授受の実際を主な質問内容とする。なお、調査協力者は30名を目途とする。面会交流支援機関である、NPO法人「あったかハウス」の活動に参加し、スタッフ及び利用者へのインタビューを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、調査者と先方とのスケジュール調整の困難さから、NPO法人「あったかハウス」への訪問活動が1回となった点がある。そのため、交通費と謝金に関する使用額が予定よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、NPO法人「あったかハウス」を拠点としたフィールドワーク的調査を実施する。また、質問紙調査を実施し、調査協力者の中から、インタビュー調査に同意してくれた人と質問紙調査とは別に募った人に対して、1時間から1時間半程度の半構造化面接を行う。対象は親の離婚を経験した青年あるいは成人であり、非監護親との面会交流の方法や養育費の授受の実際を主な質問内容とする。 なお、面会交流を継続している親子が関東圏に在住している場合は、個別調査の依頼も検討している。
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