研究課題
脳機能を非侵襲に測定することの出来るツールである磁気共鳴画像法(MRI)を用い、健常児童の発達に伴う脳機能の変化を、年齢や発達段階ごとに調査し、生活環境・習慣との関連を調査した。そして、学童期児童から成人までの注意・集中能力に関する発達と、その能力を向上させる作業を脳科学の見地から明らかにし、得られた成果を実際の教育現場へ成果を還元することを目的としている。まず、注意・集中に関する脳機能及び脳構造を調べるMRI実験を行うための、実験を企画し、これまで行ってきた注意能力を調べるためのANT課題(Attentional Network Test)と、反応抑制課題(Go-Nogo Test)を合わせて行う。また脳の構造的変化や神経走行の変化を評価できる撮影を行い、それらを解析することで、どのような認知能力が脳のどの構造の変化と対応するかを明らかにする。今年度はMRIを用いた研究のセットアップを行い、脳機能評価・脳構造評価を行うための予備的な検討を行った。被験者として、成人28名と児童28名にMRI計測を行い、脳の構造と行動の関係を評価した。その結果、年齢と共に脳の容積が変化する場所として、眼窩前頭皮質・内側前頭前皮質などの前頭葉を中心とした領域が見られた。そのほかにも、日常の親子関係や性格傾向、生活態度などを評価する質問紙データも取得しており、それらの項目と脳構造との関係を解析・評価しているところである。また、発達と共に変化する白質神経走行も成人・児童共に計測し、年齢とともにどの領域がどのように変化するか、また環境の要因がどのように影響しているかを明らかにする解析を行っているところである。
3: やや遅れている
児童並びに成人の脳機能や脳構造を計測するために用いるMRI装置の置換・メンテナンスが重なり、計画していた実験課題を遂行することが出来なかったことや、予定した被験者数を計測することが出来なかったため、進捗状況はやや遅れるかたちとなった。
今後は、実験課題の予備的検討をMRIの実機内で行い、早期の実験環境整備を終わらせる。また、児童に対するMRI撮影の負担を低減させる撮影の開発も行い、予定した被験者群の撮影を終わらせるとともに、脳と行動との関わりについて解析を進める。
実験に使用するMRI装置の移設・メンテナンスが行われたために、実験環境の再起動に時間を要した。またそのために、MRIで使用する予定の実験機器の導入が遅れたために、計画通りに物品購入が出来なかったために、次年度使用額が生じた。
新たにMRIを用いた実験環境を構築するために、早急に実験用の機器を導入する。また、予定の被験者数に達するまで、計測を重ねる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
Neuroscience
巻: 348 ページ: 288-301
10.1016/j.neuroscience.2017.02.031.
Neurosci Res
巻: 16 ページ: 30243-30247
10.1016/j.neures.2017.02.001.