研究課題/領域番号 |
16K01871
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
竹内 日登美 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 研究員 (10770620)
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研究分担者 |
原田 哲夫 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (60260692)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 子ども学 / 健康・成長 / 時間生物学 / 睡眠学 / ストレス |
研究実績の概要 |
これまでに実施した質問紙調査データから、以下のような結果を得た。①大学生の調査データの分析から、午前中にストレスを感じる学生は、感じない学生より夜型で、甘い菓子などの間食を摂取する頻度が高かった。夜型化によるコルチゾールリズムの乱れにより、午前中のストレス感受性が高まり、午前中に強いストレスを感じることで、夕方以降のコルチゾールレベルの低下に影響が出る、という悪循環が起こっている可能性が示唆された。②幼児を対象に行った調査データより、夜遅い時間帯に活動する幼児は、しない幼児に比べて夜型になるが、特に、運動する幼児では、運動中に興奮したり緊張したりする様子が見られる幼児の方が、そのような様子が見られない幼児に比べて、強い夜型化が見られるという結果が得られた。③学生を対象に行った調査データから、運動頻度と運動中の心理状態の違いによって、夕方以降に行う運動と概日リズムの関係が異なると言う結果が得られた。また、中学生を対象に行った調査データより、夜間の活動で慢性的に強すぎるストレスを感じている生徒では、その時刻が遅くなると、概日位相の夜の位相ポイントが前進し、睡眠時間を延ばす方向の変化が起きる可能性が示唆された。④2015-16年度に学生アスリートに行った調査データの分析から、調査前後で主な練習開始時間帯を夕方から朝6時台に変更した学生では、睡眠時間が短縮したものの、概日タイプ度が朝型になり、心身の不調項目の合計数が減少していた。(いずれも学会発表済)また、29年度は、幼児(の保護者)を対象に、幼児が最もストレスを感じていると思われる時間帯について問う項目を新しく追加した質問紙による調査を、予定の2倍以上の2700名超を対象に実施、1800名超から回答を得ることができた。大学生でもふだんストレスを感じることが多い時間帯についての項目をふくむ質問紙による調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度までに実施した調査データの分析を進め、学会発表など、順調に成果発表を実施している。また、2016年度に引き続き、2017年度も幼児・大学生で質問紙調査を実施し、データの更なる蓄積を図ることができた。質問紙には、昨年度までの調査結果から得られた、夜間活動を行う時間帯が同じでも、心理的負担を感じているかどうかで、その影響が異なるという結果に基づいて、新たに、活動を限定せず、日常生活でストレスを感じることが多い時間帯(強度・頻度を含む)についての項目を追加した質問項目が含まれている。小学生での調査は実施できなかったが、幼児で2015年度の倍にあたる規模の調査を行い、回答を得て、充分なデータの蓄積を図ることができた。大学生では、夕方以降の活動、運動習慣に加えて、日常生活でストレスを感じる時間帯とその頻度と程度、原因についての項目を含む質問紙調査を実施しており、日常、夜間に受けるストレスの影響について、詳細な分析を行うことが可能である。さらに、2015-16年度に、トレーニング時間の変更を挟んで学生アスリートを対象に、前後データを対照できる形で行った調査のデータの分析を行い、トレーニング時間の変更がもたらす影響の検討を行うことができた。さらに、この調査では、同時に、競技力の自己評価尺度の調査を実施していることから、引き続き、トレーニング時間が競技パフォーマンスに与える影響の分析も行う予定である。以上のように、蓄積したデータをもとに、学会発表、論文の学術誌への掲載を行うための作業も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ストレスを感じる時間帯に関する項目を含む質問紙を用いた調査を実施し(幼児、中学生、大学生)、更なるデータの蓄積を図る。また、昨年度までに得られたデータ、成果をまとめ、学会発表を複数回行う(国際学会を含む)予定である。同時に、学術誌への論文掲載を進めて行く。特に、幼児・大学生のデータを用いて、ストレスを感じる時間帯に関する項目と、概日タイプ度、心身の不調、睡眠習慣の関係についての分析を進める。また、2015-16年度に学生アスリートを対象に行った調査で実施した、競技力の自己評価尺度の変化についても追加分析を行い、トレーニング時間帯の変化が競技パフォーマンスに与える影響についても検討を行う。さらに、年度末に向けて、3年間で得られた成果全体をまとめた報告書を作成すると共に、成果を簡単に説明し、そこから得られる生活改善のための示唆をまとめたリーフレットなどの啓発資料(特に、幼児とその保護者向けを中心に)を作成、調査協力校などに配布する。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度となる2018年度に、当初予定していなかった国際学会(北海道での開催)での発表や、複数の学術論文の掲載(オープンアクセス含む)を予定しているため、2017年度に使用予定だった旅費を自費で賄い、18年度の研究成果発表用の予算とすることとした。 よって30年度に、北海道で開催される国際学会(国内学会と併催)での発表のための旅費、オープンアクセス誌の論文掲載費として使用する。
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