今年度は、2019年の「第4・5回子どもの権利委員会総括所見」をうけての、日本における「子どもの権利」の現状について検討することに費やした。 国際動向を視野に入れながら「子どもの権利」の日本における状況を検討したわけだが、「子どもの権利」保障の問題については、世界的に進行している「新自由主義的教育『改革』」と日本固有の教育政策の文脈という2つの点から検討することが不可避であるということが明らかになった。 当初予定していたドイツとの比較については論文執筆等を断念せざるをえなかったが、本年度は「子どもの権利保障」にきわめて危機的な影響を与える「ゼロ・トレランス」に基づいた生徒指導・道徳教育について、その発祥地であるアメリカとの比較も交えながら日本における状況について検証することを1つの柱とした。 子どもの成長・発達に関心を持たず、教育者の裁量を否定する「ゼロ・トレランス」は「子どもの権利」保障の対極に位置する指導の在り方であり、発祥地であるアメリカでもすでに大きな批判にさらされ一定の修正がなされているところである。教育基本法6条1項では学校教育が「教育を受ける者の心身の発達に応じて」行われなければならないことが定められているが、「ゼロ・トレランス」的指導は本条の趣旨から大きく逸脱するものである。6条1項に定める学校教育実現のためにも「ゼロ・トレランス」的指導は学校から排除されるべきであるいうことを明らかにした。
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