研究課題/領域番号 |
16K01877
|
研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
椎野 亜紀夫 札幌市立大学, デザイン学部, 准教授 (00364240)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 自然資源 / こども / 遊び / 三世代 / GIS |
研究実績の概要 |
2年目にあたる平成29年度は、具体的な対象地を選定し二世代(子世代、親世代)を対象に自然環境に対する意識、ならびに屋外での自然体験活動に関するアンケート調査を実施した。札幌市内でも特に日常生活圏に豊かな自然地域が隣接する、南区常盤地域において小学校の協力のもと調査を実施した。調査の結果、4年生62名、5年生46名、6年生48名の合計156名(ならびに同数の親)から回答を得た。こどもの屋外における遊び場としては、市街地内の都市公園がもっとも多く見られたものの、市街地周辺の樹林地等を活用した日常的な遊び活動が確認された。またクワガタムシ等の虫取り遊びが多くの児童の生活の中で日常的に行われていること、リスやシカなど野生生物を日常生活の中で観察した経験を多くの児童が持っていることが明らかとなった。さらに親世代の自然活動に対する意識やこどもの頃の自然を対象とした遊びについて調査した結果をまとめたところ、幼少期こ自然を対象とした遊びを豊富に経験しており、自然環境に関する一定の知識・経験を有する世帯が多いこと、また休日には親子でキャンプに出かけるなど自然を対象とした活動を子世代と共有していることが明らかとなった。すなわち、親世代の自然活動に対する意識の高さに加え、日常生活圏において森林や河川など自然地域へのアクセスが容易であり、野生生物などを身近に観察できる環境にあることが、自然環境に対する意識涵養と自然活動の促進に寄与している実態が明らかとなった。以上の研究成果について平成30年度上半期に学術論文にまとめ、論文投稿する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目から2年目にかけて研究代表者の勤務先が変更になったことから、主な調査対象地を札幌市手稲区から研究機関の所在地である札幌市南区に変更した。しかしながら南区も札幌市内10区の中で最大面積の森林地域を有するなど、自然地域がきわめて豊かなフィールドであり、むしろ本研究活動の対象地としてよりふさわしい場所であると言える。勤務先の異動後、当該地域において開校からの存続年数が長く児童数が極端に少数でない(調査対象として一定の児童数を有する)小学校を候補として抽出し、その中で研究機関に近い所在地の小学校に協力依頼を行い快諾が得られたことから、おおむね当初計画していたスケジュールと遜色なく研究活動を進めることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画においては、ある特定の対象地を固定して空間の時系列変化を把握するとともに、子世代、親世代、祖父母世代への幼少期の自然活動に関する調査を行い、空間の変遷と自然活動の変化がどのように連動的に変化してきたのかを明らかにする計画であった。しかしながら親世代への調査の結果、多くの世帯が居住年数が短く、幼少期から現在まで対象地に住み続けている親世代が少ない状況であることが明らかとなった。このことから今後調査を実施予定の祖父母世代への調査では、町内会等の地域組織への協力依頼を行い、幼少期から対象地に住み続けている世帯に絞り込んで調査を実施する方法で進める。加えて、対象者を絞り込んだ結果期待されるサンプル数が少数となる状況であれば、調査方法をアンケート調査から個別面接によるインタビュー調査に変更し、データの質を重視する方向へ切り替えることとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の1年目(平成28年度)から2年目(平成29年度)にかけて勤務先の異動があり、研究対象地の再選定をはじめとする調査計画の見直し作業に研究時間を費やしたことから、当初の計画よりも研究活動に伴う経費支出が大幅に少なくなった。しかしながら、平成29年度におおむね研究対象地の再選定を含めた研究計画の再構築が完了したことから、2年目の未使用額を3年目となる平成30年度に使用する。主な使途として、調査実施ならびデータベース構築に関わる人件費(学生アルバイト等)、国際ジャーナルへの論文投稿料、最終成果となる環境教材の印刷・製本費に充当する。
|