乳児―養育者間コミュニケーションの音声を可視化して解析し、その結果から、乳児保育および子育て現場に還元しうる理論構成の可能性を探求した。 具体的には、相互作用関係を通した学びと育ちの基盤として近年注目されるコミュニカティヴ・ミュージカリティ概念を援用して、乳児―養育者間に発現する動的音楽性の発現の様相を、月齢を追って可視化した。音声データは、同志社大学赤ちゃん学研究センター保有の母子間相互作用音声データおよび研究代表者らによる家庭における母子相互作用場面での既収集データ、保育園・こども園での既収集音声データ(すべて保護者と施設責任者の承諾のもとに収集)を使用した。解析にはPraatとElanを使用し、2か月児、5か月児、8か月児、9か月児、1歳5か月児、2歳児のデータを中心に、養育者との相互行為中に発現する動的音楽性を、音声特徴の相同性やタイミングの応答性といった観点から解析した。 解析の結果、音楽性の発現が生後2か月から2歳児まで一貫して、情動的なコミュニケーションの活性化に寄与していることが確認された。同時に、音楽性に支えられて相補的に構成されるナラティヴな構造性が、乳児を文化的な意味の学習へと導く重要な役割を果たしている可能性が明らかになった。このナラティヴな構造性は母子間の遊び、とくに音声と身体を軸とした遊びに関連しており、養育者のもつ応答性の重要性が明らかになったとともに、声かけや遊びのあり方に関する具体的示唆、およびさらなる探究の可能性が明らかにされた。
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