研究課題/領域番号 |
16K01887
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
是枝 喜代治 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (70321594)
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研究分担者 |
角藤 智津子 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (00153528)
鈴木 佐喜子 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (70196814)
杉田 記代子 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (80171156)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多職種連携・協働(IPW) / 障害乳幼児 / 移行支援 / 発達支援 / インクルーシブ保育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、障害乳幼児を支える専門職(保育士・保健師・言語聴覚士・医師等)による多職種連携・協働(IPW)の実態を明らかにし、特別な保育・教育的ニーズが考えられる乳幼児の包括的支援に向けた連携支援体制のモデルを構築することである。上記の目的を達成するために、平成28年度は埼玉県、千葉県、神奈川県、東京都を中心とする保育所、幼稚園、認定こども園に対するアンケート調査を実施した。現在、1,229園からデータを回収しており、今後分析を進めながら、首都圏近郊における障害乳幼児の多職種連携・協働の実態を明らかにしていく予定である。 また、「国内外の先進地域のヒアリング調査」に関しては、保幼小連携で一定の成果を上げている山形県の保育所等を視察し、東北地域における移行支援の現状や課題について聞き取り調査を行った。他方、国外の調査に関しては、ノーマライゼーションの発祥地でもあるデンマーク王国の保育所、幼稚園、障害児保育所、移行先である小学校(特別支援学級を含む)、特別支援学校の視察を行った。デンマークでは1981年に障害のある子どもの就学義務が法律として認められ、全ての子どもに教育を補償する制度が確立されている。視察では、障害のある子どもを育ててきた保護者へのヒアリングを実施したが、地域の行政改革により、障害の程度が重度な子どもに比べ、軽度な障害のある子ども(学習障害、ADHD等)の支援が不十分な状況になっているとのことである。就学前の多職種連携・協働に関しては、障害が認定されると同時に、在住地域のソーシャルワーカーが指名され、手厚い支援が展開されていくという情報提供があった。 今後は、アンケート調査の結果も踏まえながら、障害乳幼児の多職種連携・協働(IPW)のキーステーションとして考えられる児童発達支援センター(各市に1ヶ所設置)にアンケートをかけていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に示した「乳幼児期段階における専門職の多職種連携・協働(IPW)に関する実態調査」と「幼稚園・保育所等と小学校との縦軸(移行)連携に関する実態調査」は、両調査の内容を一部組み合わせて、首都圏近郊の保育所・幼稚園を対象にアンケート調査を実施した(配布総数3,085件、アンケート回収数1,229件、回収率39.8%)。今後、データ入力と統計分析を進めながら、幼保小連携の実態や障害幼児が小学校に移行する際の課題及び対策等について解明していく予定である。 「先進地域の視察」に関しては、国内1箇所(山形県)、国外1ヶ所(デンマーク王国)の視察を行った。国内視察に関しては、保育所でのヒアリングを行ったが、就学先の小学校との連携に関しては、時間的な制約があり、十分な連携が取りにくいことなどが課題として明らかとなった。また、国外視察(デンマーク王国)に関しては、特に、生後、障害が認定されるとすぐに地域のソーシャルワーカー(SW)が指名され、そのSWが家族支援のキーパーソンとなり、種々のサービスを立案、調整していくことや、学校教育段階においてはペタゴー(生活支援員)という専門職が、授業のサポートを行ったり教材の作成や準備にも携わったりするなど、有機的に子どもの支援に関わっていくことなどの知見が得られた。デンマークは高福祉のシステムが確立しており(税金を43%納めるなど)、教育や福祉、介護の領域を国が全てカバーする仕組みとなっている。日本の学校教育制度や福祉システムなどとの相違もあるため、単純な比較はできないが、応用可能なシステムも散見され、今後のIPWモデルの構築に向けた研究に生かしていきたいと考える。 なお、「保育・教育現場における多職種連携・協働(IPW)モデルの構築」に関しては、研究代表者・研究分担者が関わる埼玉県朝霞市と羽生市を中心に取り組んでいくための準備を進めている段階にある。上記が主な判断理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は、就学前機関(保育所、幼稚園、児童発達支援センター、保健センター等)において、障害乳幼児の多職種連携・協働(IPW)を先進的に取り組んでいる地域の視察を引き続き進めると共に、児童発達支援センターを中心とするアンケート調査を実施する予定である。当初、計画立案時には、全国の市町村保健センター(2,477箇所)での調査を検討していたが、保育所・幼稚園等で実施した調査の概要から、地域差は見られるものの、児童発達支援センターが各地域における障害乳幼児の発達支援のキーステーションとして機能していることなどが明らかになった。児童発達支援センターは福祉型と医療型に区分されるが、その運用については地域差なども考えられるため、本調査を通して、首都圏近郊の児童発達支援センターにおいて、障害乳幼児の多職種連携・協働による支援の実態や課題等を明らかにしていきたいと考える。 また、研究計画書に記した「地域における障害乳幼児の多職種連携・協働(IPW)のモデルの構築」及び「保育所・幼稚園から小学校への移行支援のモデルの構築」を進めるために、大学の位置する埼玉県朝霞市と、研究代表者が関わる埼玉県羽生市の保育所、幼稚園と協力しながら、学部生・大学院生の参画を含めて、アクション・リサーチを展開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に実施した保育所、幼稚園、認定こども園へのアンケート調査(配布総数3085件、回収数1,229件、回収率39.8%)の調査票回収が最終的に年度末(3月初め)となってしまったため、詳細なデータ入力、資料整理等に使用する予定であった予算を次年度に送る形とした。そのため、未使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
回収済のアンケートの詳細なデータ入力、資料整理等に関しては、平成29年度初めに、外部委託を含めて、速やかに執行する予定である。
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