研究課題/領域番号 |
16K01888
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
谷口 明子 東洋大学, 文学部, 教授 (80409391)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 病弱教育 / キャリア教育 / 病気開示 / 援助要請 / ゲーミング |
研究実績の概要 |
本研究は、病弱児対象のキャリア発達支援プログラム開発を目的とする。平成28年度は、以下の2つの研究を進めた。 プログラム開発の基礎資料を得ることを目的とする研究Ⅰとして、病弱教育におけるキャリア発達支援実践事例を収集し、内容分析を行った。病院・家庭・地域(学校)という3つの生活フィールドを行き来する病弱児への支援は途切れがちになることが多く、長期的視野に立つキャリア発達支援は展開しにくい構造をもっている。そうした中で、病弱教育機関においては、病弱児の将来的な社会的自立を視野にいれた支援実践が地道に継続されている。本研究Ⅰでは、データベースソフト(ファイルメーカーPro)を用いて、収集した66実践の指導案からねらいを抽出し、基礎的・汎用的能力(文部科学省,2011)及び独自の分類項目をたて、探索的に整理した。結果として、職業生活に直接関連のある「キャリアプランニング能力」よりも、「人間関係形成・社会形成能力」や「自己理解・自己管理能力」「病気理解・病気受容」という、社会生活上の適応に焦点をあてた取り組みがキャリア発達支援として行われていることが明らかになった。 研究Ⅱとして、自立した社会生活を送る上で当事者がかかえる課題を明らかにすることを目的として、成人した元・病弱児対象のインタビュー・データの再分析を行った。結果として、「自分の病気を誰にどのように説明し、支援を要請するのか」という病気開示の問題がキャリア形成上の一つの課題として浮上した。本結果を踏まえ、「病気開示」に焦点を当てたインタビューの準備として、協力者協力者のリクルート及びインタビュー・ガイド作成を行った。 以上の研究成果の一部は研修会講演を通して、病弱教育現場へフィードバックを行った。また、現在学会発表および論文執筆を準備中であり、次年度以降に公表していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究Ⅰに関しては、病弱教育機関は、対象児童生徒が病を抱えている為、実践事例の扱いに関してプライバシー保護の観点から非常に敏感であること、及び、病弱教育におけるキャリア発達事例がそもそも少ないことの2点から、病弱児を対象とするキャリア発達支援実践事例の収集が、当初予想していたよりも困難であったことが理由として挙げられる。現在、研究代表者が指導助言者として協働したキャリア教育実践の66事例の指導案を収集済みであるが、全国病弱特別支援学校の研究紀要等更なる収集に向け、取り組む予定である。 研究Ⅱについては、すでに社会人となっている元・病弱児という協力者のリクルートが予想以上に難しく、インタビューの実施に至らなかった。背景には、協力者の調査協力参加の自由を保障する倫理的配慮から、長年研究上の交流のある元病弱児への依頼を控えたこともあると考えられる。現在、十分な配慮のもとでの学齢期に罹患経験のある知人へのインタビュー依頼、及び、スノーボール型サンプリングによる協力者のリクルートには困難が感じられたため調査会社への協力者リクルート依頼についても検討しており、次年度はインタビュー調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として以下の3点を挙げる。 第一に、平成28年度の研究によって明らかとなった病気説明や病気開示、援助要請という研究の理論的基盤に基づき、焦点を絞った文献研究を行う予定である。 第二に、インタビュー協力者リクルート手法として、十分な配慮のもとでの学齢期に入院経験のある知人へのインタビュー依頼、及び、スノーボール型サンプリングによる協力者のリクルートには困難が感じられたため調査会社への協力者リクルート依頼についても検討しており、次年度はインタビュー調査を実施する予定である。 第三に、具体的なゲーミングを活用した教育プログラム、及びキャリア発達支援プログラムに関する情報収集を、焦点を絞り込み集中的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本務校において学科長職についていたため(28年度で任期満了)、28年度に予定していた海外学会参加はじめ遠方へ出向いての情報収集ができなかったため、28年度分出張経費分を繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年夏に海外学会において健康心理学及び精神腫瘍学に関する情報収集、また、平成29年度中にインタビュー調査の旅費、及び研究発表に関わる旅費・学会参加費として使用予定である。
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