2019年度(令和元年度)は、【研究Ⅲ:病弱教育における病弱児対象のキャリア発達支援プログラム(改訂版)開発】を進め、「病弱児対象のコミュニケーション力育成ツール(試作版)」を開発し、総括として研究成果を発表した。 平成30年度までの研究によって本研究領域との適合性が確認された「レジリエンス」理論をベースにしつつ、長期的視野にたった病弱児の社会的自立のために育成すべき資質・能力として、病状を他者に開示し、説明するコミュニケーション・スキルこそが重要であることが明らかになった。この知見をふまえ、最終年度においては、コミュニケーション・スキル育成に焦点をあてたツール(試作版)を開発した。開発にあたっては、研究代表者を中心として病弱教育担当教員・小児/AYA期長期入院経験者・本研究代表者から構成されるプロジェクトチームにおいて協働的に検討した。ツールは、厳しい治療のさなかにある子供たちを対象とする教育プログラムに必須の「楽しさ」を担保するためにゲーミフィケーションの理念に基づき、コミュニケーション・カードゲーム形式とし、トピック原案をKJ法を援用しての内容整理、及びネガティブな感情を喚起するもの、プライバシーに立ち入らないよう家庭に関するもの、集団で話すトピックとしては重すぎるものを除去し、最終的に50トピックに絞り込んだ。 試作版開発研究の成果は、2019年9月に開催された日本特殊教育学会第57回大会において自主シンポジウムおよびポスター発表として公表した。さらに、第2回AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会においてポスター発表を行い、同学術集会における招待講演においても研究課題内容について公表した。研究成果を,学会発表,論文等により幅広く公表し,病弱教育担当教員対象の研修や講演においても積極的に紹介して,成果の普及を今後も図る予定である。
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