研究課題/領域番号 |
16K01889
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研究機関 | 仁愛大学 |
研究代表者 |
森 俊之 仁愛大学, 人間学部, 教授 (00301078)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ストレス / 保育士 / 時間帯 / 年齢 / 業務役割 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、保育士の抱えるストレスを、行動的指標、心理的指標、生理学的指標などさまざまな側面から分析することである。そのために1年目は、試行的に数ヶ所の保育所を対象として、保育中の保育士の行動観察や唾液アミラーゼ測定などを行い、ストレス測定の方法を試行錯誤しながら確定する予定であった。また、あわせて、そこで得られたデータをもとに、保育士の業務役割によるストレスの違いや、保育士の経験年数による違いについて考察する予定であった。 ただ実際には、行動観察や唾液アミラーゼ測定を行う前の予備段階として、どの時間帯に保育士がどの程度ストレスを感じているかを大まかに把握する必要性があり、保育士を対象とした質問紙調査から始めることとした。具体的には、一日の生活の主な活動内容として24項目(業務に関するものと私生活に関するものの両方を含む)を設定し、それぞれの活動時間帯に感じているストレスを100点満点で評価してもらった。 その結果、最もストレス得点が高かったのは記録等の作成時であり、ついで園内での会議時であった。保護者との会話時も高く、子どもと関わっているときのような直接的な保育活動中よりも、保育に付随する活動中のほうがストレスを感じていることが示された。子どもと関わる時間として最もストレスが高いのは長時間保育時であり、ついで午前の設定保育時、園児の昼食前、園児の昼食後が高かった。仕事が終わった後の私生活の場面でのストレス得点は、家事時以外では低く、今回調査した保育士は、仕事のストレスがその後まで引きずっていることは少ないことが示唆される。 保育士のストレスには個人差も大きくみられ、保育士の属性による違いも幾つかみられた。若い保育士は年配の保育士に比べて保護者との会話時のストレスが高く、低年齢児担当保育士は高年齢児担当保育士よりも昼食時のストレスが高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、1年目の段階で、保育中の保育士の行動観察や唾液アミラーゼ測定などをある程度行う予定であったが、実際は、これらのデータをきちんと分析できるレベルまでには至らなかった。一つの理由は、研究実績の概要にも記載したとおり、行動観察や唾液アミラーゼ測定の前段階として、一日の流れの中でのストレス変化を保育士の意識レベルででも把握しておくべきであると考え、まずはそちらの調査研究を先に実施したためである。もう一つの理由は、当初協力していただくことを予定していた保育園との調整がうまくできず、別の保育園に変更して依頼をすることになり、そのための保育園側との手続きの打ち合わせなどに時間を要したためである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、質問紙調査の結果も参考にしながら、1年目の予定であった試行的なデータ測定を行っているところである。 当初の予定では、2年目は、4月から3月までの1年間のデータの変化を縦断的に分析する予定であった。しかし、昨年度からの遅れも原因し、4月からの縦断的なデータ分析は、今年度は難しいと考えている。そのため、当初2年目に予定していた内容は、3年目に実施する方向で検討している。そのかわり、3年目に予定していた複数園でのデータの比較は、2年目からでも始めることができる部分もあることから、現在行っている試行錯誤的なデータ測定が終わりしだい、複数園でのデータ測定を実施していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた行動観察および唾液アミラーゼ測定の前に、別途、質問紙調査を先行実施することにしたため、当初予定していた行動観察および唾液アミラーゼ測定については一部しか実施できなかった。今回予算計上している内容の多くは、これらの行動観察および唾液アミラーゼ測定に必要なものであり、結果として予算を一部しか執行しなかったものである。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度できなかったデータ測定については次年度に実施する予定であり、データ測定をするタイミングに合わせて、未使用分の予算について使用したい。
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