まず、保育士を対象に、ふだんの自分を振り返りながら日々の心理的ストレスがどの程度であるかを回答してもらう質問紙調査を実施した。その結果、最もストレス得点が高かったのは記録等の作成時であり、園内での会議時や保護者との会話時も高く、子どもと関わる直接的な保育活動中よりも、保育に付随する活動中のほうがストレスを感じていることが示された。 次に、保育士の実際の日々の保育業務の合間に、ストレスの生理的指標の一つとされている唾液アミラーゼ活性を測定した。その結果、書類作成後が最も高く、ついで保護者との会話後が高いことが示された。こうした傾向は、ふだんを振り返っての回想式の意識調査の結果とおおむね一致するものであった。また、午前より午後のほうが高いことも示された。 さらに、保育士と他の対人援助職のストレスや自己効力感などについて質問紙調査により職種間比較を行い、保育士のストレスの特徴を検討した。その結果、保育士のストレスは、小中学校教員と比べると、職場の物的環境によるストレスは小さいものの、職場内での対人関係によるストレスが高いこと、仕事のコントロール度が他の対人援助職に比べて低いことなどが示された。 本研究全体を通して、保育士のストレスが業務の内容によって異なることが心理的指標や生理的指標で確認されたが、ストレスが高い業務が明確となることで、その業務の後にストレス対処法を取り入れたり、その業務に対して別途金銭的手当を支給したり、その業務のための職員を加配したりするなど、さまざまな対策を検討するための基礎資料とすることができるだろう。また、午前より午後の方がストレスが高くなるということからは、業務の途中で適切な休憩をとることが望まれるが、十分な休憩をとるのが難しい保育業務の問題点が結果として現れている可能性もあり、効果的な休憩の取り方の検討も一つの今後の課題といえよう。
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