研究課題/領域番号 |
16K01893
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
志村 洋子 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (60134326)
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研究分担者 |
小西 行郎 同志社大学, 研究開発推進機構, 教授 (40135588)
嶋田 容子 同志社大学, 研究開発推進機構, 日本学術振興会特別研究員(RPD) (60422903)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳幼児の聴力 / 聴覚情報処理 / 聴覚認知実験 / 保育室内騒音レベル / 保育室内残響レベル / 気になる子 |
研究実績の概要 |
保育者の音声や子どもの声(泣き声や叫び声)、什器の触れ合う音や落下音、歩行などによって生じる騒音が、子どもの聴力や環境、知覚や認知、さらには社会的な発達にもたらす影響を明らかにすることに有る。保育室内の騒音レベルが乳幼児の聴力や聴覚情報処理、また社会的能力や問題行動とどのように関連しているか、保育室音環境と乳幼児の聴覚情報処理に関する基礎的な知見を得ることを目的としている。 2016年度は、静岡市内私立保育所を中心に、これまでに実施してきた保育室環境の測定・解析をさらに継続して実施した。併せて、1)子どもと保育者の音環境への意識を調べるため、計測を実施した園の職員を対象としたアンケートを実施した。アンケート結果では、「騒音環境」とされた保育室が多かった園の保育者は「子どもの声が気になる」について7割が「気になる」と回答し、また、最近声が出なくなった等の状況に該当する者についても7割と高い傾向が見られた。2)該当測定園においては、保育活動中の騒音測定と保育室の音響測定を実施し、室内の環境音レベルについて建築音響的測定手法を用いて残響レベルを騒音環境測定し、結果を発表した。3)幼児の聴力検査 (聴覚知覚)については、OAEを使用した聴力閾値データを採取した。騒音下の子どもの聴力閾値の損失状況並びに保育者の実際の聴力閾値の損失状況を検討している。併せて、実施した乳幼児の聴覚認知実験(社会的に重要な刺激への選択的注意を示すカクテルパーティ効果、音源定位等についての、乳幼児に親しみやすいゲームのスタイルでの測定については予備的計測を実施した。これらの成果を「気になる子」についての関連を検討していきたい。 これらの成果については、発表の場、所属学会ラウンドテーブル、ポスター発表、講演で公表した。また「子どもの声は騒音か」といった趣旨のメディアからの取材などにも対応し、研究成果を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究にあたっては、研究者がそれぞれ分担内容に特化して実施できたこと、最近の「子どもの声」についての、園と近隣とのトラブルが「音」をキーワードに問題意識として広がったことが、測定実施園などの受け入れをより順調にしてきていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の計画については以下の通りである。 1)京都府内及び埼玉県内の保育園・幼稚園・こども園に協力を依頼し、申し出のあった協力園の中から対象園を抽出する予定である。特に、騒音環境の範疇に入る園と、それ以外の静粛な環境を保持する園の2パタンに該当する園の各々3~5園程度の測定を予定している。具体的には、各々の該当園において、保育活動中の騒音測定と保育室の音響測定を実施し、室内の環境音レベルについて、建築音響的測定手法を用いて残響レベルを測定する。 2)乳幼児の聴力検査 (聴覚知覚)については、OAEを使用した聴力閾値データを採取し、併せて乳幼児用オージオメータを用いた乳幼児の聴力検査を実施し、実際の聴力レベルを測定する。さらに、1年後に再度実施することで、中長期的な聴力レベルの変化を測定できるよう、対象とする園の絞り込みを予定している。 3)聴覚以外の認知課題などとの関連も併せて検討し、「気になる子」への知見について検討するため、その手法について実施方法を確定し、予備的な実施を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
保育室内の測定が予定されながら、間際に許可が得られなかった園があり旅費、補助者などの経費が残額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度に実施予定の保育園、幼稚園、こども園における保育室内の音響測定に際して、併せて聴力測定の追加測定として「社会的に重要な刺激への選択的注意」を示すカクテルパーティ効果や音源定位等について、乳児幼児向けの実験手法の開発に充てる予定である。
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