本研究では、児童・生徒約900名を対象に、社会経済的因子・ソーシャルサポート・生活習慣も考慮しつつ、ポジティブ・ネガティブ両面の心理的特性および多日数欠席・遅刻と身体活動指標(体力・スクリーンタイム)の関連を3年間の縦断調査により検討した。 今年度は、研究課題の最終年度であるため、これまでに蓄積した経年データを縦断的に解析し、地方都市郊外の公立小学校の児童と国立大学附属中学校の生徒それぞれについて、これまでの成果を取りまとめた。低学年時の横断的解析では、児童・生徒ともにスクリーンタイムが多いと睡眠指標が不良であり、朝食欠食が多く、体力が低かった。さらに、運動行動の客観的指標としての体力はネガティブな心理的特性および欠席日数(中学生では主観的成績)と有意な関連が認められ、友人関係も体力が高いほど良好であった。さらに、親子の調査から、児童の生活習慣は親の養育意識や親自身の生活習慣と関連し、特に、親の運動嫌いは子どもの低体力に極めて強く関連していた。これらの成果は原著論文として学術誌に公表した。縦断的解析においても、上述した低学年時の傾向は高学年まで持ち越され、低学年時でスクリーンタイムが長い子どもは、高学年での生活習慣、体力、心理的特性、友人関係、主観的学業成績が不良であり、それらが多日数欠席に影響していた。結論として、低学年時のうちから、生活習慣の徹底と放課後のスクリーンタイムを運動や学習に置き換える取り組みに加え、子どものみならず小学生以下の子どもを持つ親への啓蒙も並行して強化する必要性が確認できた。 上記の成績を早急に学術誌に投稿するとともに、実践に落とし込む具体策を講じる必要がある。教員が多忙を極める学校から親に啓蒙活動を行うことは困難が多いことから、若年労働者層を抱える職域で一括啓蒙を行うなど、学校保健とは異なる視点からのアプローチを開拓することが課題として残された。
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