研究課題/領域番号 |
16K01896
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
赤井 愛 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (90578832)
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研究分担者 |
谷本 尚子 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 非常勤講師 (20454655)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 視覚障害児 / 療育 / 玩具 / 生活動作 |
研究実績の概要 |
視覚障害を持つ未就学児童(以下視覚障害児とする)の認知特性に沿った玩具の設計・制作及び検証を行い、それらの結果を平成30年度までにデータベース等の形で公開することを目的とし、平成28年度は下記内容を実施した。 1.盲児研究及び療育の現場での知見の収集を目的とし、京都府立盲学校資料室での調査を基礎に、盲学校の草分け的存在であった京都盲唖院創立者古河太四郎が考案した盲児教育の資料から、萌芽期の盲児教育について考察した。特に身体性を重んじた独自の教育方法には、今日の盲児教育にも繋がる様々な示唆を得た。また併せて、視覚のみに依らない概念形成や造形活動の可能性を拡げるため、レッジョ・エミリアの幼児教育についても調査を実施した。 2.視覚障害児療育施設において、療育に活用される頻度の高い玩具について、種類、目的、構成要素等の観点から分類を行った。 3.玩具を用いた療育の多くが、生活動作(ボタンを留める、ハサミで紙を切る等)の習得と深く関わる内容であることから、先行研究より24種類の基本的な生活動作を抽出、その習得難易度について、視覚障害児18名、晴眼児27名の保護者に対し質問紙による調査を実施した。これらの結果から、(a)特に習得難易度が高い生活動作、(b)晴眼児と比較して習得難易度の差が大きい生活動作、(c)視覚に障害があることにより経験の機会が得にくい動作、を抽出した。このうち(b)(c)で抽出された生活動作と、視覚障害児の認知特性や生活習慣等との関連性について、療育者3名に対し半構造化面接を実施した。また各生活動作を構成する基本動作(つまむ、回す等)について、発達段階ごとに分類し、先行研究及び2で得られた内容から、各基本動作習得に適していると考えられる玩具を一覧できる表を作成した。 上記2、3は、社会福祉法人京都ライトハウス『あいあい教室』の協力を得て実施したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の当初目標のうち「盲児研究及び療育の現場での知見の収集、整理」については概ね予定通りに実施し、成果を得る事ができたが、「盲児と療育玩具との関わり方の特性分析(ダイアグラム化)」については、視覚障害児の発達段階の差異、重複障害の有無などにより、玩具との関わり方は非常に個人差が大きく、これらを一般化してダイヤグラム作成に至る事が困難であったことから、分析方法の変更を検討した。ダイヤグラム化の実現については当初の予定通りの実施が適わなかったが、幼児への療育と生活動作の習得(レディネス)には密接な関係があることから、生活動作の習得難易度について質問紙による調査分析を進めることにより、「生活動作と発達段階」という観点から視覚障害児の特性を捉えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.調査によって得られた盲児研究及び療育の現場での知見と、生活動作習得の難易度や構成する基本動作の分類などを併せ、視覚障害児の認知特性に添った玩具のプロトタイプを製作する。 2.1で製作した玩具が視覚障害児にとってわかりやすく楽しめるものであるかどうか検証を行う。検証方法については、視覚障害児自身による印象評価の他、観察と療育者(あるいは保護者)による評価の併用などを検討している。 3.平成28年度に作成した生活動作を構成する基本動作と発達段階に応じた玩具の一覧表を、ウェブサイトで閲覧可能な状態とする。また情報は随時更新し、市販玩具だけでなく手作り玩具などの情報も加えていき、平成30年度にはデータベースとして機能することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
・当初平成28年度購入予定であった観察記録用ビデオカメラ3台及び三脚を、別テーマでの使用を目的に、平成27年度末に購入済みであったため。 ・平成28年度は研究支援者雇用費が発生しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に得た成果について、当初予定より1年早く29年度中にデジタルコンテンツ化を実施、30年度にかけてウェブサイトで公開しながら随時ブラッシュアップを行う予定であり、その制作費用に充てることとする。
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