平成30年度は下記内容を実施した。 1.療育ツール創出:29年度に作成したプロトタイプを元に複数回のプロトタイピングを重ね、視覚障害児にとって特に困難である「はさみで紙を切る」「ひもを丸結びする」「端が開いたファスナーの上げ下げ」の3つの生活動作の習得を助ける療育ツールをそれぞれ創出した。また、これまでの調査の過程で、特に盲児にとって関心を持ちにくいことが指摘されていた「衣服のコーディネート」について、RFIDタグを用い、音やメロディで上衣・下衣の組み合わせを想起させることにより衣服のデザインへの興味・関心を高め概念形成を促すツールを制作した。 2.療育ツールの検証:制作した3点の生活動作習得支援ツールについて、4~6歳の盲児3名の療育を通して「提案したツールが生活動作習得に対して効果的か」「意欲的に楽しみながら生活動作習得の為に取り組むことができるか」の2点について検証した。未就学児童本人に対する定量的な主観評価が困難であるため、①療育者によるツールの事前評価、② 療育の場での使用観察及びワンゼロサンプリング法による発話・行動の生起頻度抽出、③療育者によるツールの事後評価、の3段階での評価・検証を行うことにより、ツールの有用性や課題を明らかにした。 3.データベースの検証及び改善:29年度に作成した「生活動作練習プログラム」に基づいたカード型データベースについて、施設の療育者及び保護者各6名に対し質問紙調査を実施し、併せて画面操作中の発話を抽出した。これらの結果から、①データベースの検索結果に動画を埋め込めるようにするなど使い方に関する情報量を増やす、②個々の生活動作に加え、シーンごとの検索を可能とする、③現在、年齢(月齢)で示している練習開始目安時期については別の形での表現を試みる、といった点について改善を加えたデータベースのフォームを新たに作成した。
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