研究課題
こどもは成人に比べていくつかの臓器において放射線被ばくによる発がんリスクが高いことが知られている。しかしその機構は十分にわかっていない。そこで本研究では、脳腫瘍(髄芽腫)を自然に発症し、さらに放射線被ばく後に髄芽腫を高頻度に発生するPtch1遺伝子ヘテロ欠損マウスを用いて、被ばく時年齢が異なることによる発がんリスクの違いを腫瘍発生メカニズムの観点より明らかにすることを目的とする。具体的には、照射線照射後の髄芽腫発生過程を自然発生及び放射線誘発髄芽腫前駆細胞に着目して解析をし、(1)なぜ放射線ひばくで髄芽腫のリスクが高くなるのか?、(2)なぜ被ばく時年齢の違いでがんリスクが変動するのかを明らかにし、放射線防護、特に子ども期の放射線リスク管理に重要な基礎データを提供する。平成28年度は「自然発生型と放射線誘発型前がん病変の同定」において当初予定をしていた解析方法の確立を試みたが至らなかった。そのため、マイクロダイセクション法による前がん病変の採取及びゲノム解析(LOH解析及びゲノムコピー数解析)方法の条件検討を行った。平成29年度は、上記解析方法の追加条件検討を行うとともにマウスの作出・照射・サンプリングを行った。また、「顆粒細胞の放射線初期応答」においても同様にマウスの作出・照射・サンプリングを行い、一部条件検討を行った。平成30年度は、前年度までに回収したサンプルを用いて前がん病変のゲノム解析を行った結果、非照射群と照射群とで自然発生型と放射線誘発型の発現パターンが異なっていた。以上の結果から、生後21日齢(小脳が発生するまでの間)までの間に放射線に起因するがんの誘発が認められ、がんの発生過程(前がん病変)段階である時期でも、これら遺伝的特徴を利用することにより放射線のリスクの推定を行うことが可能であることを示唆することができた。
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