研究課題/領域番号 |
16K01908
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松田 冬彦 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (10219446)
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研究分担者 |
沖野 龍文 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (30280910)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 全合成 / クロロスルホリピッド / 含塩素化合物 / プローブ分子 |
研究実績の概要 |
Mytilipin CとDanicalipin Aなどに代表されるクロロスルホリピッド類は黄金色藻などから単離された天然有機化合物である。食中毒の原因化合物として特定されており、その特異な構造にもとづく作用機序に興味が集まっている。本研究では、Mytilipin CとDanicalipin Aの活性発現作用機序の解明を目指した、全合成を基盤とするMytilipin CとDanicalipin Aの蛍光プローブ分子の合成を目的としている。また、クロロスルホリピッド類の全合成には、高度に立体制御された効率のよい塩素原子の導入法の開発が求められる。その1つとして、アリル・エポキシドの塩化物イオンによる開環反応を系統的に検討することとした。 Mytilipin Cは14個の不斉中心を有する天然有機化合物である。全合成に先立ち、モデル化合物を用いた研究を進めており、8連続不斉中心子を含む12個の不斉中心を立体選択的に構築する方法論を見出した。また、Mytilipin C自体の全合成も進めており、5個の不斉中心の立体制御に成功した。 Danicalipin Aでは、すでに全合成を達成している。全合成で確立した合成法をもとに、全合成の最終段階で酸素官能基化されたGrignard試薬を用いて、末端水酸基を有するDanicalipin A誘導体の合成に成功した。現在、導入した水酸基を手掛かりに蛍光官能基化を検討している。 アリル・エポキシドの塩化物イオンによる開環反応において、エポキシドのα位に配置される置換基に応じて、立体選択性が変化することを見出した。すなわち、不飽和エステルを配置すると立体特異的に開環反応が進行するが、対応するアリルアルコールでは立体異性体の混合物を与える場合があることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mytilipin Cでは、28年度において合成上最も困難な連続不斉中心を有する構造の立体選択的な構築法を確立できた。Danicalipin Aでは、蛍光官能基導入に目途を立てることができた。塩化物イオンによるアリル・エポキシド開環反応では、クロロスルホリピッド類の全合成に幅広く使える有用な知見が得られており、Mytilipin CとDanicalipin Aの全合成への応用を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
Mytilipin Cでは、28年度で得られて知見をもとづき全合成に向けた研究を進める。Danicalipin Aでは、種々の蛍光官能基を導入し、それぞれの化合物のbrine shirimpに対する活性を評価する。これにより、プローブ分子としての有用性を判断する。塩化物イオンによるアリル・エポキシド開環反応では、立体異性体の混合物を与えるアリルアルコールに対して、メカニズム解明を視野に入れて、アルコール部分をエステルやエーテルに変換し、開環反応の立体選択性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
合成実験に必要な試薬等の購入にあたり若干の差額が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度の研究目標は、28年度に確立した合成手法を用いてMytilipin Cの全合成を達成すること、および、Danicalipin A誘導体に蛍光官能基を導入した化合物を種々合成し、生物活性発現機構解明のためのプローブ分子を見出すことである。このために行う合成実験に必要となる試薬等の購入に充当する。
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