研究課題
グラム陰性菌Campylobacter jejuni(C. jejuni)の細胞外膜成分であるリポオリゴ糖(LOS)は、オリゴ糖の末端に糖脂質リピドAが結合した構造からなっている。C. jejuni由来のオリゴ糖はヒトの神経組織に含まれるガングリオシドと分子相同性があるため、ヒトの体内に入ると一定の確率で免疫交差反応を誘発し、自己免疫疾患を惹起させると考えられている。しかし、C. jejuniと同様の分子相同性を有するHelicobacter pyloriなどは免疫交差反応を誘発しないことから、我々はオリゴ糖部分の分子相同性以外の要因としてLOSによる免疫亢進作用に着目し、活性中心と考えられるリピドAの合成研究に着手した。一般的にリピドAはグルコサミン骨格(GlcN)のみで構成されるが、C. jejuniリピドAは特殊な2,3-ジアミノグルコース骨格(GlcN3N)を含むなど、糖骨格自体に構造多様性を有している。しかし、これまでにGlcN3N骨格を含むリピドAの合成例はないため、本研究では新規合成戦略によりC. jejuniリピドA 群を系統的に合成し、糖骨格の多様性に基づく構造活性相関研究を行った。具体的には、GlcN3N骨格を含むリピドA群に対して、新規二糖中間体群を経由する合成戦略を展開した。2017年度までに、特異なGlcN3N二糖骨格の構築法を確立し、GlcN3N二糖骨格からなるC.jejuni由来リピドA(GlcN3N-GlcN3N型)の合成を達成した。2018年度は、他の3種のリピドA群(GlcN-GlcN型、GlcN-GlcN3N型、GlcN3N-GlcN型)の合成を完了し、世界初となるC. jejuniリピドA 群の系統的合成を達成した。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (43件) (うち国際学会 13件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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