ヒトデの腕の自切は、長い腕を持つヒトデに見られる特徴的な生体防御機構で、腕の脱離までの時間により、’slow autotomy’ と ’quick autotomy’ に分けられる。我々は、環境の悪化や細菌感染などにより起こる ‘slow autotomy’ を引き起こす自切誘起因子を明らかとしており、この化合物の投与により、’slow autotomy’ を誘起することができる。この化合物誘起による自切でも、その後に腕の再生を伴う。本研究では日本沿岸種のマヒトデ (Asterias amurensis) を用いて、自切後のヒトデの腕の再生の機構を解明することを目指した。 これまでの研究において'slow autotomy'では、自切誘起因子のみの投与と比べて、自切に要する時間が短くなる種々の場合を観察してきた。マヒトデ自切誘起因子と自切時間の遅延が観察されたラパマイシンを投与し自切させた後、再生初期までの観察を行った。自切誘起因子のみの投与とラパマイシンと自切誘起因子の投与を比較して、再生スピードの違いは観察されなかった。 自切誘起因子を用いた自切の後の腕の再生は、切断面が組織に覆われた後に始まった。切断面が覆われるまでは摂餌が観察されず、摂餌開始からしばらくは体重の減少が観察された。なお、全例で放射神経から切断された環状神経の付け根部分が盛り上がり、突起が生じて後の腕が形成された。
|