研究課題/領域番号 |
16K01921
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大崎 愛弓 日本大学, 文理学部, 准教授 (50161360)
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研究分担者 |
福山 愛保 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (70208990)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬用植物 / アルカロイド / 天然蛍光成分 / 全合成 |
研究実績の概要 |
独自に集めた植物1000種より新規天然蛍光化合物を探索する目的で,メタノール抽出によるエキスライブラリーを構築した。そのうち106種224種について10mgを正確に計り取り,メタノール1mLに溶かしてTLC(F254不含量)にスポットを行った。365 nm 蛍光照射下にて,その殆どの植物エキスにおいて強弱の差はあるが,蛍光スポットが認められることが分かった。そのうち30-40%が赤色蛍光を示した。赤色蛍光の多くは葉緑素(クロロフィル)のポルフィリン構造によるものであることが推測された。 輝度の違いはあるが,青色,黄色,緑色蛍光などの蛍光を示すものが数多く認められた。赤色蛍光を持つ検体は,クロロフィルを除く目的で,LH-20, ODSなどに伏してみたが,前処理としては簡便とはいえず,方法論の開拓が必要であると考えられる。全ての検体についてTLCで展開を行った。黄色,青色蛍光を示すスポットを選択し,その中で強い蛍光を示すいくつかの検体について,天然蛍光化合物の単離を行うことにした。ミカン科のコクサギ(Orixa japonica) に強い青色蛍光が認められ,蛍光化合物の単離を行ったところ,フランを含むキノリン系アルカロイドであるskimmianineが同定された。本化合物は,337 nmでの励起波長において419 nm に強い蛍光スペクトルを示すことが明らかとなった。今後は類縁化合物の徹底調査を行うことにより,構造と蛍光の関係,あるは蛍光特性について検討を行う。 ブラジル産薬用植物Quassia amara より得られた 天然蛍光化合物amarastelline Aの全合成研究については,残り一段階を残し,合成が達成された。Quassia amara由来のカンチン誘導体および化学的に合成された誘導体の蛍光特性について詳細に検討を行いことにより,PH応答型の蛍光センサーへと展開を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで行ってきたQuassia amara由来のamarastelline Aの種々の誘導体合成とそれらの蛍光特性については,誘導体作成を行うことにより,PH応答型の蛍光センサーへの応用研究が展開している。これらの結果については論文にまとめた。一方,amarastelline Aの全合成研究についてはほぼ達成され論文としてまとめた。新たな天然蛍光化合物を見出すべく,約200種の検体を用いて,探索研究を行った。その結果,キノリン系アルカロイドであるskimmianine を見出すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
Orixa japonica由来のskimmianineを見出したことにより,フラン環とfuseしたキノリン系アルカロイドの蛍光について詳細な検討を行う。その他のミカン科由来の植物種についても採集を行う。今回の探索で同様に強い蛍光の認められた植物成分について単離同定を行うこととする。現在のところ,エキスライブラリーの20%程度の蛍光スクリーニングを行うにとどまっていることから,今後,人員を確保することにより,目的達成を行う。合成研究については,キノリン系アルカロイドの合成による誘導体作成についても検討を開始する。amarastelline A誘導体の蛍光特性については,今後はカンチン誘導体を中心として,蛍光センサーへの応用を試みる。蛍光イメージリングについても細胞への蛍光導入を中心に続行するものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
機材等の購入が多く,器具や試薬への充当が出来なかったため残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬,器具等に用いる予定である。
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