研究課題
西部四国領域植物エキスライブラリーの蛍光スクリーニングにおいて強い蛍光成分が認められた検体のうち,コクサギ(Orixa japonica,ミカン科)について蛍光成分の分離精製を継続した。その結果,60種以上の化合物の単離精製を行うことが出来た。蛍光強度についてはフラノキノリン類がもっとも強い蛍光を持ち,クマリン類も次いで強かった。そのうち主成分であるシキミアミンについて,生細胞への導入を試みている。細胞への導入効率をあげるために脂溶性を高める目的での誘導体作成等も同時に行っている。一方,蛍光成分が認められた植物種について,ナンテン(Nandina domestica)より黄色蛍光成分が認められたことから,成分の単離を行った。その結果,ベルベリンであることが明らかとなった。さらに ヒコダイ(Echinops setifer)より,強い青色蛍光成分が認められたがその成分についてはウンベリフェロンであることが明らかとなった。現在,フサザクラ(Euptelea polyandra)に含まれる強い黄色蛍光物質について成分の分離を行ったところ,明らかな強い黄色蛍光物質を数種単離することに成功したが,NMRにおいてシグナルが観測されないため,X線結晶構造解析等について検討している。南米産薬用植物 カッシア アマラ(Qussia amara)由来のAmarastelline Aの全合成研究については最終段階を迎えている。今後全合成に向けて検討を継続する。さらに,amarastelline Aを母核とし,構造の改変を行った化合物群の蛍光特性,およびpH応答についての検討を行うことにより,カンチン構造が環境応答型の蛍光センサーとして有用であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
約150種の西部四国域の植物エキスライブラリの構築と蛍光スクリーニングを行った。昨年度の蛍光スクリーニングにおいて強い蛍光が認められたコクサギの継続に加え,ナンテン,ヒコダイ,フザザクラなどの多様な植物成分の蛍光成分について検討を行った。天然蛍光物質については,数多く含有されてはいるが,分離,単離が困難なケースが多かった。超微量で分析が出来ないケースも多発した。多様な天然蛍光化合物群の単離を成功させるために,分野開拓を行うことも目的としているが,当初の目的は遂行されているものと考える。初期の研究として,南米産植物由来Quassia amaraの蛍光成分アマラステリンAを用いた蛍光化合物の合成研究,あるいは蛍光母核構造を用いたセンサーへの適用などについても同時に研究を進めている。
既に構築済みの植物エキスライブラリーを活用し,多様な植物に含まれる蛍光成分について明らかにしていく。蛍光成分の新規分野開拓と蛍光成分の扱い方,分離手法などの開拓を同時に行っていく。さらに,得られた蛍光成分,蛍光成分の母核構造を活用して,更なる有用な化合物への改変などを視野にいれ,生細胞への導入,あるいは蛍光イメージリング剤への応用研究などを行うこととする。生細胞導入については誘導体作成などについても順次行い,応用研究へと展開を行う予定である。
国際会議への参加費を他の経費より支出したため。冷凍庫などの機器備品購入のために使用する予定である。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
J. Oleo. Sci.
巻: 67 ページ: 1209-1217
https://doi.org/10.5650/jos.ess18036
Bioorg. Med. Chem. Lett.
巻: 28 ページ: 1063-1066
https://doi.org/10.1016/j.bmcl.2018.02.022
Eur. J. Org. Chem.
巻: 5 ページ: 679-687
https://doi.org/10.1002/ejoc.201701609
ACS Omega
巻: 3 ページ: 15879-15889
10.1021/acsomega.8b02485
Adv. Exp. Med. Biol.
巻: 1074 ページ: 649-653
10.1002/anie.201805370
Biochem. Sys. Ecol.
巻: 78 ページ: 98-101
https://doi.org/10.1016/j.bse.2018.04.009
Eur. J. Med. Chem.
巻: 148 ページ: 86-94
https://doi.org/10.1016/j.ejmech.2018.02.014
Nat. Prod. Comm.
巻: 13 ページ: 157-161
https://doi.org/10.1177/1934578X1801300212
https://ohsakilabo.jimdo.com/