研究課題/領域番号 |
16K01922
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
北口 哲也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60432374)
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研究分担者 |
坪井 貴司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80415231)
上田 宏 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (60232758)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グルコース / 蛍光タンパク質 |
研究実績の概要 |
本年度はATPセンサーの開発とマルチカラー化に取り組んだ。青色、緑色、赤色の蛍光タンパク質に枯草菌のATP合成酵素のεサブユニットのATP結合ドメインを挿入し、蛍光タンパク質とATP結合ドメイン間のリンカーの長さやアミノ酸配列を最適化することにより、3色のセンサーの開発に成功した。この青緑赤のセンサーはATP添加により、それぞれ蛍光輝度が90%、390%、350%増加する。 このセンサーの開発に成功したことにより、同じ細胞内の異なる細胞内小器官でのATP動態を可視化することが可能となった。HeLa細胞の細胞質に緑色、ミトコンドリアに赤色のATPセンサーを発現させ、ミトコンドリアのATP産生を阻害するオリゴマイシンで刺激したところ、ミトコンドリアのATP濃度の低下と、細胞質でのATP濃度の上昇が観察された。この現象は、HeLa細胞ではミトコンドリアでのATP産生が阻害されると、それを補うために解糖系が促進されるため引き起こされると考えられた。 さらにATPとそれ以外のシグナルとの同時可視化に挑戦した。褐色脂肪細胞の細胞質に青色カルシムセンサーと緑色cAMPセンサー、ミトコンドリアに赤色ATPセンサーを発現させ、βアドレナリン受容体のアゴニストであるイソプロテレノールを添加し、熱産生刺激をしたところ、まずcAMPが上昇し、続いてミトコンドリア内のATPが低下、最後にカルシウムが上昇する様子を可視化することができた。これはこれまで提案されてきた熱産生のシグナルカスケードを初めて同時に観察した例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ATPセンサーのマルチカラー化だけでなく、緑色cGMPセンサーの開発や、cAMPセンサーの赤色化に成功している。さらにグルコースセンサー、ピルビン酸センサーの開発も近い。
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今後の研究の推進方策 |
cAMP、cGMP、ATPのセンサー開発に成功している。さらにグルコース、ピルビン酸のセンサーの開発とマルチカラー化に取り組む
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次年度使用額が生じた理由 |
予想よりも順調にセンサー開発が進んだため、消耗品費を節約することができた。 本研究課題で提案したセンサーの多色化は達成できているが、さらに多くのセンサーの多色化を達成しつつある。次年度使用の研究費は、論文投稿料、英文校閲料、追加実験のための消耗品代に使う。
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