緑色輝度変化型のグルコース可視化蛍光センサーを開発した。グルコースはエネルギー源として、生物個体の活動や恒常性の維持に重要な役割を果たしている。したがって、エネルギー代謝における、複数分子間の相互作用や階層的機能相関を解析するために、マルチカラーイメージングに適した単色型センサーの開発が待ち望まれていた。前年度までに開発したcGMP、cAMP、ATPセンサーと同様の方法で蛍光タンパク質とグルコース結合ドメイン間のリンカーの長さ調節とランダムアミノ酸変異導入を行うことでグルコースにより蛍光強度が7倍程度に上昇するセンサーを獲得することに成功した。さらに、グルコースの結合能に関与するアミノ酸残基への変異導入により、EC50が50 uM、600 uM、4000 uMの3種類の緑色蛍光センサーを獲得することにも成功し、それぞれGlifon50、Glifon600、Glifon4000と名付けた。これらのセンサーの励起スペクトルのピークは503 nm、蛍光スペクトルのピークは523 nmであった。それぞれのセンサーをHeLa細胞に導入したところ、グルコース刺激により蛍光輝度の上昇が観察された。この上昇は、Glifon50、Glifon600、Glifon4000の順で小さくなっていることから、それぞれのセンサーの親和性を反映してリスポンスしていると考えられた。したがって、これら3つのセンサーを使い分けることで、生細胞内での幅広いグルコース濃度の検出が可能である。マルチカラーイメージングにより、単一細胞内でグルコースと他分子との同時可視化すれば、エネルギー代謝における複数分子間の相互作用や階層的機能相関の解析に貢献すると考えられる。
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