研究課題/領域番号 |
16K01926
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
福田 将虎 福岡大学, 理学部, 助教 (90526691)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | RNA編集 / ガイドRNA / 遺伝子変異導入 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞内タンパク質機能をRNAレベルで制御する方法の開発を最終目標とし、部位特異的RNA変異導入技術の開発を行っている。これまでに、A-to-I RNA編集機構を利用したRNA変異導入技術の基盤的方法論を構築している。本RNA変異導入法は、RNA編集酵素である二本鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼ(ADAR)の編集活性を目的部位に誘導するガイドRNA(編集ガイドRNA: AD-gRNA)を設計し、それをADAR発現細胞内に導入することで合目的なRNA変異導入を達成する。AD-gRNAは、標的RNAと塩基対を形成するアンチセンス領域と、編集活性を目的部位に誘導するADAR誘導領域で構成される。本年度は、グルタミン酸受容体mRNA前駆体配列を基に構築したAD-gRNAを基盤に、各種変異体gRNAを設計・合成し、in vitro編集解析を通して、効率的かつ特異的にRNA編集を誘導することが可能なAD-gRNA配列の探索を行った。結果、AD-gRNAは、ADAR誘導領域の5’側にアンチセンス領域配置することで、高い編集誘導活性と特異性を示すことを明らかにした。また、5’側にアンチセンス領域もつAD-gRNAは、3’側にアンチセンス領域を有するものとは、ADAR2の編集誘導メカニズムが異なることを明らかにした。さらに、培養細胞内での編集誘導活性を評価する実験系を構築し、これまでin vitroで得られたAD-gRNAが、ADAR2発現細胞において標的RNA編異導入が可能であることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、従来のAD-gRNA配列を改変した複数のガイドRNAを新たに設計した。その中から、in vitro及び培養細胞内において、部位特異的な編集誘導活性有する新たなAD-gRNAを構築することができた。また。上記実験で得られた結果から、AD-gRNA配列をさらに精密に設計できるようになった。加えて、ADAR2だけではなく、ADAR1の編集活性を誘導するガイドRNAの基盤配列を構築した。平成28年度に行った研究及び、それにより得られた研究成果は、申請当初の研究計画と大きな違いはなく、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、申請時の研究計画に従い、構築したAD-gRNAを用いたRNA変異導入法をより汎用性の高い技術として確立することを目的とする。そのため、設計した各種AD-gRNAの培養細胞内での機能評価を重点的に行う。まず、AD-gRNAの編集誘導活性のより詳細な解析を可能にするため、改変型ルシフェラーゼレポーターRNAを用いて、新たな評価方法を確立する。これにより、培養細胞内でのRNA変異導入によるタンパク質発現量変化を定量的に解析できるようになる。また、AD-gRNAの細胞導入方法(リポフェクション、ウイルスベクター)の検討、及び機能性配列(核移行シグナル、分解耐性配列、等)の付加など、細胞内で特異的かつ高効率にRNA変異導入が達成できる条件を決定する。さらに、これらの研究をADAR1とADAR2のそれぞれについて実施することで、ADAR特異的なRNA変異導入条件を明らかにする。加えて、AD-gRNAに人工核酸を導入し、その機能を評価する。以上の研究により、培養細胞内で高効率かつ特異的なRNA変異導入ができるAD-gRNA及びその方法論を確立する。
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