研究課題/領域番号 |
16K01927
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
村田 佳子 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 主席研究員 (60256047)
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研究分担者 |
難波 康祐 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 教授 (50414123)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 鉄代謝 / ニコチアナミン / 小腸吸収 / トランスポーター / 植物性食物 / Caco-2細胞 |
研究実績の概要 |
① 小腸吸収モデル細胞、Caco-2細胞でのアッセイ:Caco-2細胞をMillicell24ウエルセルカルチャープレートに培養し、そのapical側の培地に鉄が3価に酸化されないようにアスコルビン酸(1 mM)を添加しNA (0.1 mM)、NA-Fe(II)錯体0.1 mM(NA(1 mM)+Fe(0.1 mM))、Fe (0.1 mM)添加の4群を各々添加後、37度CO2インキュベーターで1時間培養し、回収した細胞内とbasal側の培地に排出したNAと鉄の定量を行った。NAはF-MOC標識化してLC-MSで分析し、鉄は59-FeSO4を用いて、アイソトープ鉄をカウントした。その結果、鉄とNAのbasal側への排出量は約50-200 μMとほぼ同量であり、やはり1:1で錯体形成し、排出されると考えられた。また鉄排出量は鉄のみ投与よりNA鉄錯体のほうが約3倍多く、apical側のアッセイ培地のpHを変えると、pHが低い方がbasal側への鉄排出量が増加し、プロトン駆動型のトランスポーターの関与が示唆された。 ② Caco-2細胞アッセイ後の鉄関連遺伝子変動:Caco-2細胞を同様に鉄またはNA鉄錯体投与後、37度CO2インキュベーターで24時間培養した細胞を回収して、RNAを抽出した。このRNAをもとに定量PCR解析を行い、NA-Fe(II)投与群と鉄投与郡を比較した。鉄関連遺伝子のうち2価鉄取り込みのトランスポーターproton-coupled divalent metal ion transporter(DMT1)と2価鉄排出トランスポーターFerroprtin (FPN)のRNA発現はコントロールに比べて共に顕著に低下し、細胞内鉄貯蔵タンパク質、Ferritin遺伝子は増加していた。しかし、若干NA-Fe錯体投与のほうが鉄のみ投与より変動が少なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小腸吸収上皮細胞モデル、Caco-2細胞でのNAや鉄の取り込みアッセイ方法を確立した。またFe、NAおよびNA-Fe錯体を反応させてRNAを比較し、鉄関連遺伝子の変動が鉄投与と同じ傾向であることでNA鉄錯体でも鉄吸収効果があることを明らかにした。さらに遺伝子変動のある10数個のSLCファミリー遺伝子をトランスポーターの候補として、輸送活性、発現局在を調べることにより、トランスポーターの同定に進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はNAおよびNA-Fe錯体トランスポーターの同定を集中的に行う。 ①小腸吸収上皮細胞、caco2細胞にNAおよびNA-Fe錯体を反応させてRNAを比較し、SLCファミリー遺伝子をトランスポーターの候補に挙げることができた。これらトランスポーター候補遺伝子をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させてNAおよびNA-Fe錯体を輸送するか検証する。活性の認められた遺伝子に関してはcaco2細胞にRNAi遺伝子を導入してノックダウン細胞を作成し、活性の低下を確認する。 ②ニコチアナミンの標識体の合成も同時に行い、マウスに経口投与し、腸およびオルガノイド内でのNAの挙動を蛍光顕微鏡を用いて、鉄はアイソトープで観測することにより、その輸送、蓄積、代謝の解明を試みる。
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