研究課題/領域番号 |
16K01935
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山田 久嗣 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 講師 (80512764)
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研究分担者 |
近藤 輝幸 京都大学, 工学研究科, 教授 (20211914)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体適合性ポリマー / 薬物送達 / 分子イメージング / 双性イオン型ポリマー |
研究実績の概要 |
本年度は、ホスホリルコリン基を側鎖にもつ双性イオン型ポリマー(PMPC)プローブの双性イオン対構造を変化させた新規ポリマープローブの開発に成功した。本研究の準備段階として細胞膜脂質の一部であるホスホリルコリン骨格を安定同位元素でラベルしたPMPCプローブを開発し、これが腫瘍に極めて効率良く集積する様子を分子標的MRIにより画像化できることを明らかにしている。本年度は、PMPCのホスホリルコリン部位のアニオン中心ーカチオン中心を入れ替え、かつ両中心間距離を短縮した双性イオンを有するメタクリレートモノマーを原子移動ラジカル重合を用いて重合することにより、新規双性イオン型ポリマープローブ(PMCB)の合成に成功した。本プローブの分子サイズを透過型電子顕微鏡および動的光散乱法を用いて調べ、水晶発振子マイクロバランス法によりプローブと血中タンパク質との相互作用(プローブの生体適合性)を検討し、蛍光法を用いてプローブの体内動態について評価した結果、PMCBはPMPCと同様にコンパクトな分子サイズを有すること、血中タンパク質との非特異的吸着が抑制されること、さらにPMCBはPMPCと同程度の高い腫瘍選択性を示すことが明らかとなった。これにより、高い腫瘍選択性および腫瘍集積性をもつPMPCにおいて、ホスホリルコリン部位は必須の構造因子では無く、種々の双性イオン対構造で置換可能であることが示唆され、高い生体適合性を有し腫瘍に効率良く集積する双性イオン型ポリマープローブの分子設計指針が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は、生体適合性の双性イオン型ポリマー”そのもの”を分子標的MRIで可視化できる高精度・高感度な新しいDDSイメージング材料および手法の開発である。実績概要で述べた通り、本年度は腫瘍に高集積することを見出しているホスホリルコリン基を側鎖にもつ双性イオン型ポリマー(PMPC)プローブの双性イオン対構造を変化させた新規ポリマープローブ(PMCB)の開発に成功した。詳細な検討の結果、高い腫瘍集積性と選択性を示す双性イオン型ポリマーの骨格部分には、ホスホリルコリン部位は必須の構造因子では無く、種々の双性イオン対構造で置換可能であることが示唆された。これらにより、腫瘍に効率良く集積する双性イオン型ポリマープローブの分子設計に関して基礎的な知見が得られた。この観点から、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しており、研究計画に大きな変更は無い。本年度で得られた知見である、高い生体適合性を有し腫瘍に効率良く集積する双性イオン型ポリマープローブの分子設計指針を基盤として、ポリマープローブに薬剤を複合化することにより本プローブのさらなる高機能化を図る。具体的には、本ポリマープローブへの安定同位元素(13C核、15N核)の導入法の最適化と合成、さらに抗がん剤や放射線増感剤を含有した13C/15N-双性イオン型ポリマーの合成および機能評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初見込額よりも少ない物品費額で研究遂行が可能であったため次年度使用額が生じたが、研究は概ね計画通り順調に進んでいる。本研究には、プローブ分子の合成・機能評価に必要な有機合成試薬、安定同位元素試薬、生化学関連試薬、ガラス器具、培養関連プラスチック製品、実験動物等の消耗品が必須である。これらは年度を問わず購入せざるを得ないため、繰り越した研究費を次年度使用に充当することにより、本研究のより一層の進展を見込んでいる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究費の使用計画に大きな変更は無い。次年度使用額は、プローブ分子の合成と機能評価に必要な消耗品の購入に充当する。また、関連研究を進めている国内外の研究グループと議論ならびに資料収集を行う必要があり、その旅費を計上している。研究成果を海外論文誌に投稿するにあたり、外国語論文の校閲料、雑誌投稿費用を計上している。
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