• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

エチレンの「三重反応」を誘導する新規物質EH-1の作用機構解明と実用化研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K01936
研究機関秋田県立大学

研究代表者

王 敬銘  秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (20300858)

研究分担者 原 光二郎  秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10325938)
鈴木 龍一郎  秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70632397)
上田 健治  秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (80279504)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード植物ホルモン / エチレン / 三重反応 / ピラゾール / 植物成長調節剤
研究実績の概要

本年度において、以下の3点の研究を行った。まず、「三重反応」誘導活性を示すピラゾール系化合物EH-1の蛍光プローブを開発し、それを利用した蛍光解析研究。そして、定量的RT-PCR法によるRNA-Seq解析結果の再現性の確認。さらに、活性の強いEH-1誘導体N-(1-アリル‐3,5-ジメチル‐1H‐ピラゾール-4‐イルメチル)‐N-メチル‐3,4‐ジクロロベンゼンスルフォアミド(EH-28)を用いる三重反応誘導活性化合物の綿に対する落葉誘導活性の検証である。
EH-1の蛍光プローブを開発するため、本研究では、ダンシル基を蛍光発色団とする化合物を合成した。 N-(1-アリル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イルメチル)-N-メチルアミンとダンシルクロリド反応することにより蛍光プローブEH-DFを調製した。調製したEH-DFの蛍光スペクトルを測定したところ、最大励起波長が350 nmであり、最大蛍光波長は535 nmである。EH-DFのシロイヌナズナに対する三重反応誘導活性を評価したところ、30μM濃度では、明瞭な胚軸伸長抑制活性、根の伸長抑制活性とフックの弯曲誘導活性を示した。蛍光顕微鏡を用いた解析では、EH-DF由来の蛍光シグナルが細胞壁に集積する結果が得られた。
また、RT-PCR法によるRNA-Seq解析結果の再現性の確認において、次世代シークェンサーを用いたRNA-Seq解析結果と一致する結果が得られたので、次世代シークェンサーの解析で得られた結果の信憑性が確認された。
さらに、EH-28を用いた綿に対する落葉誘導活性の認証研究では、エチレンに比べ、明瞭な綿落葉誘導活性が認められなかった。この結果と次世代シークェンサーの結果を照らし合わせると、EH-1の植物三重反応誘導活性の作用機構はエチレンと異なる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度に掲げた目標であるEH-1蛍光プローブの合成とそれを利用した植物組織におけるEH-1の作用部位の解析を推進した。EH-DFのシロイヌナズナに対する三重反応誘導活性を評価したところ、30μM濃度では、明瞭な胚軸伸長抑制活性、根の伸長抑制活性とフックの弯曲誘導活性を示した。蛍光顕微鏡を用いた解析では、EH-DF由来の蛍光シグナルが細胞壁に集積する結果が得られた。これは、EH-1の植物「三重反応」誘導作用機構に関する予期していない知見であり、全く新しい知見である。
他方、EH-1処理により誘導される遺伝子の発現レベルをRNA-Seqで解析した結果の信憑性について、本年度において、定量的RT-PCR解析を行い、RNA-Seq解析結果の信憑性により確認されたので、EH-1処理により誘導される遺伝子の発現レベルと植物の「三重反応」現象の関連について精査する必要が出てきた。
さらに、EH-28の綿落葉誘導活性がエチレンと異なることが明らかにされたことから、EH-28がエチレンと異なる作用機構により「三重反応」の形態を誘導する可能性が示唆された。そのため、EH-1の作用機構を解明するには、新たなアプローチが必要であると判断している。

今後の研究の推進方策

EH-1の植物「三重反応」誘導活性作用機構はエチレンと異なることが明らかにされたので、現時点において、以下二つの研究を中心に推進していく予定である。
まず、EH-DFを用いた解析では、EH-DFの蛍光シグナルが細胞壁に集積すること明らかにされている。特に、細胞の縦軸に対して細胞の上部と下部に集積するので、EH-DFがオーキシンの輸送に関係する可能性が示唆されている。そこで、本研究では、オーキシン輸送阻害剤を用いて、EH-DFの作用とオーキシン輸送の関連を精査し、EH-DFの三重反応誘導機構解明の糸口を探る。また、EH-1の三重反応誘導活性とエチレンシグナル伝達経路の関連を解析するため、エチレンシグナル遺伝子突然変異体を用いる解析を推進する。具体的には、エチレン受容体遺伝子突然変異体ETR-1やエチレンシグナル下流に存在するEIN-3などの遺伝子突然変異体を用いて解析を進める。

次年度使用額が生じた理由

キャンペーン価格で安く買った部品があったため。次年度の部品等の消耗品の購入に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] A Chemical Genetics Strategy That Identifies Small Molecules Which Induce the Triple Response in Arabidopsis2017

    • 著者名/発表者名
      Keimei Oh ,Tomoki Hoshi, Sumiya Tomio, Kenji Ueda and Kojiro Hara
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 22 ページ: 2270(1-14)

    • DOI

      doi:10.3390/molecules22122270

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Synthesis of imidazole and indole hybrid molecules and antifungal activity against rice blast.2017

    • 著者名/発表者名
      Sumiya Tomio, Mai Ishigaki Oh K.
    • 雑誌名

      Int. J. Chem. Eng. & Appl.

      巻: 8 ページ: 233-236

    • DOI

      doi: 10.18178/ijcea.2017.8.3.662

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Chemical Genetics Strategy Identifies Small Molecules Induce Triple Response in Arabidopsis.2018

    • 著者名/発表者名
      Oh K
    • 学会等名
      8th International Conference on Bioscience, Biochemistry and Bioinformatics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 植物の「三重反応」を誘導する蛍光プローブの合成と利用に関する研究2018

    • 著者名/発表者名
      王敬銘、藤田寛大、江崎奨吾、冨尾冴
    • 学会等名
      日本農薬学会第43回大会
  • [学会発表] エチレン活性を示す新規化合物の発見と作用機構解析研究.2017

    • 著者名/発表者名
      王 敬銘,冨尾冴,星智樹, 原光二郎,上田健治,吉澤結子
    • 学会等名
      日本農薬学会第42回大会
  • [学会発表] エチレン活性を示す化合物の開発と作用機構解析2017

    • 著者名/発表者名
      富尾 冴、王 敬銘
    • 学会等名
      第52回大会植物化学調節学会
  • [学会発表] Discovery of small molecules display ethylene activity through compound library screening2017

    • 著者名/発表者名
      Keimei Oh
    • 学会等名
      XIX International Botanical Congress
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi