研究課題
本研究課題では、Cystathionine beta-synthaseやCystathionine gamma-lyaseにより産生される硫化水素、チオール(分子内に-SH基を持つ)化合物、そしてパースルフィド(分子内に-SSH基を持つ)化合物等「含硫化合物」の生体機能メカニズムの解明を目的とする。申請者は、平成28年度までの成果として、チオールの蛍光プローブを用いた含硫化合物の絶対定量系を確立し、その手法によりチオール化合物のみならずそれらのパースルフィドが心機能に重要であることを示唆した。平成29年度は、組織中の含硫化合物について、空間情報を含めた詳細な検討を行うことを目的とし、MALDI-MS-imaging法による含硫化合物の検出を試みた。しかし、申請者が用いた大気圧イオン源を用いたイメージング法は、イオン化の過程で-SH基、-SSH基ともにスルフォン酸化(-SO3H)してしまうことがわかった。つまり、高い抗酸化能を有し、組織中濃度が高いチオール化合物である還元型グルタチオン(GSH)とその酸化型である酸化型グルタチオン(GSSG)は、どちらもスルホン酸化されGSO3Hとして検出される。その他のチオール化合物についても同様の現象が確認され、この手法では組織中の含硫化合物について正確な情報が得られないことから、MALDI-MS-imaging法にかわる手法としてラマンイメージング法を試みることにした。物質固有の波長を持つ散乱光が生じる「ラマン散乱」を利用した手法で、試料を乗せるガラス基板に金属微粒子を配置することにより散乱光が増強されるSurface-enhanced Raman spectroscopy(SERS)という手法を用いると、チオール原子が金属粒子と結合しスペクトルが特に増強される。最終年度はこの手法を用い、組織中の含硫化合物の検出を試みる予定である。
3: やや遅れている
当初、組織中の含硫化合物について、空間情報を含めた詳細な検討を行うことを目的とし、MALDI-MS-imaging法による含硫化合物の検出を予定していたが、申請者が用いた大気圧イオン源を用いたMALDI-MS-imaging法は、イオン化の過程で-SH基、-SSH基をスルホン酸化(-SO3H)してしまい、組織中の含硫化合物について正確な情報が得られないことがわかった。そこで予定を変更し、ラマンイメージング法による検討を行うこととしたため、やや遅れが生じている。
ラマンイメージング法を用い、組織中の含硫化合物について、空間情報を含めた詳細な検討を行う。物質固有の波長を持つ散乱光が生じる「ラマン散乱」を利用した手法で、試料を乗せるガラス基板に金属微粒子を配置することにより散乱光が増強されるSurface-enhanced Raman spectroscopy(SERS)という手法を用いると、チオール原子が金属粒子と結合しスペクトルが特に増強される。まず、チオール化合物、パースルフィド化合物の標品を用い、各化合物のスペクトルパターンを確認し、その後組織切片を用いた検出を試みる。
組織中の含硫化合物について、空間情報を含めた詳細な検討を行うことを目的とし、MALDI-MS-imaging法による含硫化合物の検出を予定していたが、申請者が用いた大気圧イオン源を用いたMALDI-MS-imaging法は、イオン化の過程で-SH基、-SSH基をスルホン酸化(-SO3H)してしまい、組織中の含硫化合物について正確な情報が得られないことがわかった。そこで予定を変更し、ラマンイメージング法による検討を行うこととしたため、本年度MALDI-MS-imaging法に使用予定だった予算を次年度に繰り越し、その予算をラマンイメージングに当てる予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
Nature Communications
巻: 9 ページ: 1561
10.1038/s41467-018-03899-1
Cardiovasc Res.
巻: - ページ: -
10.1093/cvr/cvy063
Int J Parasitol Drugs Drug Resist.
巻: 8 ページ: 125-136
10.1016/j.ijpddr.2018.02.004
Metabolism, clinical and experimental.
10.1016/j.metabol.2017.09.003
Mol Cell Biol.
巻: 37 (16) ページ: -
10.1128/MCB.00248-17