研究課題/領域番号 |
16K01939
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
久保 貴紀 安田女子大学, 薬学部, 講師 (90435751)
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研究分担者 |
柳原 五吉 国立研究開発法人国立がん研究センター, その他部局等, その他 (20158025)
瀬山 敏雄 安田女子大学, 薬学部, 教授 (90163120)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | RNAi / コンジュゲート / 核酸医薬 / DDS / 抗腫瘍効果 / マルチジーンサイレンシング / 肝転移がん |
研究実績の概要 |
本研究では、肝臓へ転移した腫瘍に対する抗腫瘍効果を、複数のがん関連遺伝子を標的としたマルチ遺伝子サイレンシング法を利用して脂肪酸結合型siRNA (Lipid-siRNAs)を全身投与することで評価し、臨床での応用を目指すことを目的としている。H29年度では、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸をsiRNAに直接結合させたLipid-siRNAsを合成し、恒常的にルシフェラーゼ遺伝子を発現できる大腸がん細胞(HT29Luc)に対する細胞導入性、血管新生増殖因子(VEGF)およびβ-カテニン(β-CAT)遺伝子をターゲットとしたin vitroおよびin vivoでのRNAi効果を評価した。In vitroでのRNAi効果を評価した結果、Lipid-siRNAsは未修飾のsiRNAに比べHT29Luc細胞に対し高い細胞導入性を示し、かつ、in vitroにおいて標的遺伝子の発現を著しく抑制した。次いで、in vivoにおけるLipid-siRNAsの抗腫瘍効果を肝転移マウスモデルにて評価した。実験は、VEGFまたはβ-CATおよびその両方を標的としたLipid-siRNAをInvivofectamineとの間で複合体を形成させ、尾静脈から担がんマウスに全身投与した後、IVISを用いてマウス全身のルシフェラーゼ発光を観察した。その結果、VEGFおよびβ-CAT遺伝子を標的としたLipid-siRNAsを投与した個体群は、未処理群に比べ肝臓に形成された転移腫瘍の増殖を強く抑制した。また、VEGFとβ-CATの2つの遺伝子を同時に標的とした2つのLipid-siRNAを併用したマルチ遺伝子サイレンシング法を利用した結果、相乗的な抗腫瘍効果を達成することに成功した。以上のように、Lipid-siRNAsは、in vitro およびin vivoにおいて強い遺伝子発現抑制能を有していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり進展している。前年度同様、肝転移マウスモデルの作製には共同研究者である柳原によって確立されており、ルシフェラーゼ遺伝子を恒常的に発現する大腸がん細胞(HT29Luc)をマウスの門脈から移植することにより、移植後一週間程度で頻度高く肝転移するマウスモデルを使用している。このマウスモデルは形成された腫瘍から検出できるルシフェラーゼ発光を利用できるため、本研究で用いるLipid-siRNAsのin vivoでの抗腫瘍効果をIVISを用いて簡便かつ定量性高く評価できている。また、前年度は1つの遺伝子(VEGFまたはβ-CAT)に対するLipid-siRNAsの抗腫瘍効果を評価したが、今年度はVEGFおよびβ-CAT遺伝子を同時に標的とした2つのLipid-siRNAを併用したマルチ遺伝子サイレンシング法を利用し、相乗的な抗腫瘍効果を達成することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度、平成29年度において、VEGFまたはβ-CATの1つの遺伝子、もしくは、VEGFおよびβ-CATの2つの遺伝子を同時に標的としたLipid-siRNAsの肝転移マウスモデルに対する抗腫瘍効果について評価した。その結果、Lipid-siRNAsは標的遺伝子に対し高い抗腫瘍効果を示し、かつ、2種類のLipid-siRNAsを併用することで相乗的な抗腫瘍効果も達成した。平成30年度はこの結果を参考に、リンパ節転移がんなどの難治性の転移がんについても検討したい。また、Lipid-siRNAsの脂質部位についても様々な炭素長や不飽和脂肪酸、2本鎖脂質なども検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はおおむね順調に進行している。次年度使用額は研究分担者を含め16049円と小額であり、当該研究に大きな変更が生じたためではない。したがって、この16049円は平成30年度の研究費の一部として使用する。
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