研究課題/領域番号 |
16K01943
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山崎 良彦 山形大学, 医学部, 准教授 (10361247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト / 活動電位 / 伝導速度 / 海馬 / 依存性薬物 |
研究実績の概要 |
本年度では、ラットおよびマウス脳の薄切片(スライス標本)を用い、依存性薬物の急性効果を検討した。ラット海馬スライス標本において、ニコチン(10 microM)を灌流投与してニコチン性アセチルコリン受容体の活性化による伝導速度変化について検討したところ、活動電位の潜時はニコチン投与前の約92%に短縮していた。細胞体での興奮性の変化を相殺する方法によって算出しているため、この結果から、ニコチンによって活動電位の伝導速度が促進されることがわかった。また、灌流投与ではオリゴデンドロサイトが約4 mV脱分極したが、微量局所投与では膜電位の変化がみられなかった。記録したオリゴデンドロサイトが存在する領域(海馬白板)では、脱感作しないタイプのニコチン受容体を発現する介在ニューロンの軸索が分布している。このため、ニコチンによって介在ニューロンが持続的に発火し、それに伴う細胞外K+ 濃度の増加に反応してオリゴデンドロサイトが脱分極している可能性が考えられた。また、マウス海馬スライス標本において、メタンフェタミン(0.1 mM)の灌流投与による軸索伝導への効果について検討したところ、平均では投与前の103.7 ± 2.0% (n = 24) と有意な変化はみられなかった。しかし、短い潜時(1.75ミリ秒未満)の場合はメタンフェタミンによって延長(109.8 ± 1.8%, n = 14)し、長い潜時(1.75ミリ秒以上)の場合は短縮する(95.2 ± 1.9%, n = 10)傾向がみられたため、軸索の部位によってメタンフェタミンの効果が異なっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間では、主に以下の事項について、依存性薬物の急性効果と慢性効果をそれぞれ検討していく。 1.オリゴデンドロサイトでの変化の検討 2.活動電位の軸索伝導に対する依存性薬物の急性効果 3.活動電位同調作用の変化の検討 当初の計画通り、本年度では急性効果についての検討を行った。2ついて、実験計画にあげている3つの薬物(ニコチン、メタンフェタミン、コカイン)のうち、2つの薬物について急性投与による検討を行い、結果を得ている。また、1についても、コントロールとなるデータをラットおよびマウスの両方で得ることができた。3についても、ニコチンの作用についてデータが集まってきている。データ取得・解析とも問題なく行えており、研究進捗状況としては、順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、活動電位の軸索伝導に対する薬物の急性効果の検討を行う。ニコチン、メタンフェタミンについてはさらに例数を重ね、再現性を確認する。特にメタンフェタミンに関しては、軸索の部位によって反対の効果を示す可能性が高いため、さまざまな潜時の活動電位を記録していく。また、コカインの急性効果も検討する。急性実験においては、オリゴデンドロサイトの膜電位変化および神経活動によって増加する細胞外K+濃度のバッファー機能についても検討を加える。特に膜電位変化については、間接的な変化を含んでいる可能性も否定できないことがわかってきたため、薬物の灌流投与と微量局所投与との両方を行い、調べていくことにする。 また、H29年度後半からは、各薬物の急性投与による活動電位同調作用の変化、および各薬物の慢性投与による効果、特にオリゴデンドロサイトの形態変化についての検討も始める予定である。
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