研究課題/領域番号 |
16K01943
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山崎 良彦 山形大学, 医学部, 准教授 (10361247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト / 活動電位 / 伝導速度 / 海馬 / 依存性薬物 |
研究実績の概要 |
本年度では前年度に引き続き、ラット海馬の薄切標本を用いて依存性薬物の急性効果を検討した。オリゴデンドロサイトの細胞体からホールセル記録を行い、薬物によるオリゴデンドロサイトでの変化を調べた。コカインについては、10 microMでは電位依存性ナトリウムチャネルを阻害しないことを確認し、その濃度で実験を行った。メタンフェタミンの投与では、静止膜電位が平均2.90 mV (n = 6) 過分極側にシフトしたのに対し、コカインおよびニコチンでは、それぞれ平均1.73 mV (n = 12) と3.98 mV (n = 6) 脱分極した。コカインあるいはメタンフェタミンの作用機序はまだ不明であるが、これらの薬物がオリゴデンドロサイトに作用することがわかった。また、海馬白板でのシータバースト電気刺激により同部に位置するオリゴデンドロサイトで脱分極性の変化が起こるが、薬物の投与により、その反応の大きさはそれぞれ投与前の74.5%(メタンフェタミン, n = 6)、84.7%(コカイン, n = 8)、81.3%(ニコチン, n = 5)に抑制された。活動電位の潜時に対する効果については、昨年度メタンフェタミンの効果をマウスで検討し、軸索の部位によって反対の効果を示すことを見出していたが、今年度の実験によりラットでも同様であることがわかった。これに対し、コカインでは、ほぼすべての部位で潜時が延長していたが、短い潜時(神経細胞体に近い部分)よりも長い潜時(神経細胞体から離れた部位)での変化の方が大きかった。ニコチンについてはさらに例数を増やし、潜時が短縮することを確認した。以上のことから、依存性薬物はオリゴデンドロサイトに作用すること、軸索伝導に修飾効果をもたらすこと示され、さらに、その効果は薬物によって異なっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間では、主に以下の事項について、依存性薬物の急性効果と慢性効果をそれぞれ検討していく。 1.オリゴデンドロサイトでの変化の検討 2.活動電位の軸索伝導に対する依存性薬物の急性効果 3.活動電位同調作用の変化の検討 本年度では急性効果についての検討を行った。1について、研究計画で挙げているすべての薬物(コカイン、メタンフェタミン、ニコチン)についてデータを取得した。2ついても、3つの薬物について急性投与による検討を行い、結果を得ている。3についても、ニコチンの作用についてデータが集まってきている。データ取得・解析とも問題なく行えており、研究進捗状況としては、順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、活動電位の軸索伝導に対する薬物の急性効果の検討を行う。かなり例数がそろってきたが、昨年度まででも述べてきたとおり、軸索の部位によって各薬物の効果が大きく異なっているため、さまざまな潜時(部位の違いを反映)の活動電位を記録し、軸索部位と修飾効果の大きさとの関係を明らかにする作業に入る。また、薬物によるオリゴデンドロサイトでの電気的性質の変化、オリゴデンドロサイトが髄鞘を形成している軸索への電気刺激による脱分極性反応の変化についてデータ数を増やし、再現性を確認する。 また、複合活動電位の記録を行い、各薬物の急性投与による活動電位同調作用の変化を調べる。さらに、各薬物の慢性投与による効果、特にオリゴデンドロサイトの電気的性質の変化と形態変化について検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在投稿中および執筆中の論文について、本年度では受理に至らず、掲載料が発生しなかった。 次年度では、投稿中の論文の掲載料、さらに執筆中の論文の投稿料などが必要であるため、翌年度使用額として計上することになった。 研究計画としては、実験の実施内容はF-7-1の項目8の通りであり、これに研究成果の論文投稿が加わる。
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