本年度では、昨年度に引き続き、依存性薬物(ニコチン、メタンフェタミン、コカイン)の慢性投与による、(1)オリゴデンドロサイトでの電気的性質の変化、(2)オリゴデンドロサイトが髄鞘を形成している軸索への電気刺激による脱分極性反応の変化、(3)活動電位の軸索伝導に対する影響を調べた。慢性投与の効果の検討では、異なる個体間・標本間での比較となるため、潜時差分布の変化を検討項目とした。 ニコチン慢性投与による効果について、昨年度までに、オリゴデンドロサイトの静止膜電位と入力抵抗に変化はないこと、電気刺激による脱分極性反応は大きくなっていたこと、活動電位の潜時差の量子サイズが小さくなっていることを報告した。本年度で例数を重ねて検討したところ、効果が同様であることを確認した。 メタンフェタミンについては、活動電位の潜時差の量子分布が乱れる傾向にあることを昨年度の実績報告書で記述したが、本年度での例数の追加および再解析により、量子分布に乱れはあるものの量子サイズを評価することが可能であり、そのサイズが減少していることを確認した。 コカインの慢性投与については、オリゴデンドロサイトの静止膜電位、入力抵抗に変化はないものの、電気刺激による脱分極性反応は大きくなっていたことがわかった。また、活動電位の潜時差の量子分布の乱れが顕著であることも見出した。 以上のことから、本年度の研究により、3種の薬物の慢性投与による効果は、オリゴデンドロサイトに対しては共通している部分が多いのに対し、軸索伝導については薬物間で大きな差異があることがわかった。
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