研究実績の概要 |
本研究は各種in vivo 細胞イメージングの手法を用いて認知症における脳の血流低下と認知症発症との因果関係を検証することを目的とした。最終年度となる本年度は、成体マウスを対象とし、複雑な脳血管の構造と神経活動とを同一の3次元画像空間上で定量評価するための手法を構築し、脳活動時の血流反応について正常データの取得をおこなった。 実験には大脳皮質の神経細胞に細胞内カルシウムイオン濃度のセンサータンパク質であるGCaMP3を発現させた遺伝子組み換えマウスを用いた。実験開始前にマウスの体性感覚野に相当する大脳皮質直上にイソフルラン麻酔下で閉鎖頭窓を設置し、頭窓設置後に麻酔を遮断し,マウスは飼育ケージにおいて十分な回復期間を与えた。実験時には、マウスを顕微鏡下のステージに固定し、覚醒下で撮像を行った。血管を蛍光造影するためスルホローダミン101を腹腔に投与した。二光子顕微鏡を用いてマウス大脳皮質体性感覚野の神経細胞および血管構造を撮像した。神経血管構造の撮像を目的とした構造画像では、ピクセル解像度0.25 μm/pixel,深さ方向0.8 μm間隔で1回撮像し、神経血管機能の撮像を目的とした機能画像では、ピクセル解像度1 μm/pixel,深さ方向に1.6 μm間隔で連続で撮像した。機能画像の撮像中に右頬髭に機械刺激(無刺激, 1, 4Hzもしくは無刺激, 1, 4, 8Hz)をそれぞれ20回ずつ与えた.得られた二光子顕微鏡画像に対して自作のMatlab ソフトウエアを用いて神経活動および毛細血管の反応について解析を行った。その結果、正常マウスでは計測した体性感覚第II/III層の毛細血管のうち約15%の毛細血管が神経活動に応じて拡張収縮を示すことが明らかになった。今後は、計測した毛細血管の反応と認知機能との因果関係の解明に向けて研究を展開していく。
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