研究実績の概要 |
有髄神経軸索ランビエ絞輪部両隣、パラノード部位に存在する髄鞘-軸索間結合paranodal axo-glial junction(AGJ)の軸索機能恒常性維持への関与を明らかにする目的で、AGJ形成不全マウスCST欠損マウス(CSTko)を用いて研究を行なっている。これまでに、CSTko小脳プルキンエ細胞軸索の局所でのIP3R1の過剰発現が、軸索腫脹を引き起こすことを明らかにしている。IP3R1は小胞体に存在するIP3誘導性のカルシウムチャネルであるので、AGJ形成が、軸索カルシウム恒常性維持および小胞体の分布に関与している可能性がある。H30年度はCSTko小脳プルキンエ細胞軸索の腫脹とミトコンドリア-小胞体近接領域(MAM)に着目し以下の結果を得た。 CSTkoプルキンエ細胞軸索のIP3R1陽性腫脹部位にMAMに豊富に存在する分子であるmitofusin2, Sigma1R, GRP75などの分子が集積し、これら分子はIP3R1陰性部位には認められなかった。すなわち、IP3R1の軸索局所への集積が他の分子の軸索局在に影響を及ぼしていること、またミトコンドリアおよび小胞体の軸索内分布にも関与している可能性が示唆された。マウス小脳組織からパーコール密度勾配法を用いてMAMを精製し生化学的に解析した結果、CSTko小脳のMAM画分に存在するmitofusin2のタンパク量は、正常マウス小脳のMAM画分と比較して増加していた。AGJ形成維持は、有髄軸索のMAMの状態にも重要であると考えられ、またIP3R1分子がミトコンドリア-小胞体近接領域の状態を左右する主要分子であることが示唆された。
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