研究課題/領域番号 |
16K01953
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
橋本 龍一郎 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (00585838)
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研究分担者 |
保前 文高 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (20533417)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 吃音 / 発話 / 脳刺激法 |
研究実績の概要 |
吃音者の非流暢性発話の原因となる脳機能変調を同定するため、低侵襲脳刺激(経頭蓋直流刺激: tDCS)法を用いた研究をおこなった。具体的には、成人吃音者13名を対象として、左半球の前方・後方言語野、および右半球の相同部位を標的に、それぞれについて陽極および陰極刺激を実施し、発話の流暢性の変化を検討した。陽極刺激は、刺激部位の脳機能を亢進させ、陰極刺激はその部位の機能を抑制すると考えられるため、刺激部位と刺激電極によって、それぞれ発話への影響が異なることが予想された。その結果、右半球言語野相同部位の刺激において、選択的な発話流暢性の向上などの観察を得、吃音者における発話非流暢性の脳内基盤の一部となる脳部位と、その機能変調の方向性を同定することができた。その結果をまとめて、学会(第62回日本音声言語医学会総会)などで発表し、国際専門誌に論文を投稿した。また、遅延聴覚フィードバックは、発話を実時間で変調させ、話者にフィードバックする手法であり、一部の吃音者には発話の流暢性を向上させる効果があることが知られているが、その効果には個人差が大きいことが知られているため、発話非流暢性の異種性を観察するために適当な研究デザインである。このことから、一部に吃音症状が観察される自閉スペクトラム症・注意欠陥多動性障害を対象として、遅延聴覚フィードバックによる発話流暢性の変化を検討する行動実験の準備を開始した。これまでに、自閉スペクトラム症・注意欠陥多動性障害のボランティアを募集するためのリクルート体制の整備を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、吃音者を対象とした、低侵襲脳刺激および遅延聴覚フィードバックによる発話流暢性の変化の検討を完了することができた。さらに、自閉スペクトラム症と注意欠陥多動性障害を含めた成人の発達障害における発話非流暢性を検証する研究の準備を開始することができ、最終年度である平成30年度までにデータを収集する見通しができたため。
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今後の研究の推進方策 |
遅延聴覚フィードバックを用いた発話流暢性の変化を、自閉スペクトラム症、注意欠陥多動性障害、およびそれらの発達障害を伴わない吃音者で横断的に比較することにより、発話非流暢性に関する発達障害内における異種性の存在を実証していく方針である。
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