研究課題/領域番号 |
16K01954
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
藤原 智徳 杏林大学, 医学部, 准教授 (90255399)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | シナプス関連分子 / 社会行動 / オキシトシン / ドパミン |
研究実績の概要 |
社会行動の障害は、統合失調症や自閉症などの精神神経疾患で認められる。近年、その制御に関わる因子としてオキシトシンなどが見出されてきたが、その作用機序の詳細は不明である。本研究ではシナプス機能による社会行動制御について検討するため、シナプス前終末でシナプス伝達放出を制御するsyntaxin1A を欠損したマウス(STX1A KO)マウスを用いた解析を行っている。本研究でマウスの社会行動について解析する新たな実験系を確立した。これは被験体マウスが、ビデオ解析ソフトにより、フィールド内の一定の位置におかれたマウスと接触する時間を測定する簡便かつ客観的な方法である。この測定系を用いて、STX1A KOの社会行動を解析したところ、既知と新規のマウスの識別に障害を認めた。この行動障害はドパミン作動薬およびオキシトシンの投与により改善され、STX1A KOでこれらの分泌量が低下していることを示した(Fujiwara et al 2016 J Neurochem)。また、オキシトシンと類似の神経ペプチドであるバソプレシンについても検討したところ、同様の改善効果がみられた。さらに、オキシトシン、ドパミンの作用機序について薬理学的解析を行ったところ、STX1A KOの社会行動障害に対するオキシトシンの作用はドパミン受容体のアンタゴニストにより阻害され、またドパミンの作用はオキシトシン受容体のアンタゴニストにより阻害されることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STX1A KOにおける社会行動障害に対する薬理学的解析を計画通りに遂行することができ、その成果の一部を論文、学会で発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
組織化学的解析、薬理学的解析を行い、社会行動制御に対するオキシトシンおよびドパミンの相互作用について検討する。また、STX1A KO以外の社会行動に障害がみられるモデル動物として、enrichmentな飼育環境での飼育やストレス負荷したマウスを用いて、オキシトシンおよびドパミンの作用について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マウスを使った実験が順調に進んだため、研究開始前に予想した使用予定数を下回った。それに伴い、各種消耗品の使用量も少なくなったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究の進展により、29年度は分子生物学的解析が多くなることが予想されるので、その経費に充てる予定である。
|