強迫性障害の症状を記述する数理モデルとして、不安な状態から強迫行為を行うことで不安のない状態に戻るという2状態間の遷移問題を設定し、不安のない状態と不安のある状態で、「何もしない」「不安な状態に遷移する」「強迫行為を行う」の行動を各状態に設定した強化学習問題を設定し、シミュレーションおよび実験によりモデルの検証を行った。これまでにシミュレーションでは、 正のTD誤差を用いた学習パラメータと、負のTD誤差を用いた学習パラメータの関係が非対称の領域では、強迫性障害の症状(「不安な状態に遷移する」と「強迫行為を行う」の繰り返し)が発生することを明らかにし、強迫性障害患者ならびに健常者を対象とした意思決定課題実験では、強迫性障害患者では正のTD誤差を用いた学習パラメータと、負のTD誤差を用いた学習パラメータが非対称な領域に分布することを明らかにし、モデルを支持する結果を得た。今年度は強迫性障害患者ならびに健常者の安静時脳活動データの解析を行い、上記のパラメータの非対称性が、直接路・間接路の機能異常によって生じる可能性を示唆する結果を得た。これら一連の結果をまとめ、論文に投稿予定である。
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